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030 災害救助法との違い(2011年5月19日)

 地震保険による、全損・半損・一部損の認定と、災害救助法に基づく全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊とを混同した向きがありますが、目的も基準も異なるものです。地震保険による認定基準は、あくまでも地震保険の支払いを目的としたものです。

 災害救助法は、災害の際に、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い、災害にかかった方の保護と社会の秩序の保全を図ることを目的として制定されています。都道府県知事が行い、市町村長がこれを補助します。

 救助の種類は、

  @ 収容施設(応急仮設住宅を含む。)の供与
  A 炊出しその他による食品の給与及び飲料水の供給
  B 被服、寝具その他生活必需品の給与又は貸与
  C 医療及び助産
  D 災害にかかった者の救出
  E 災害にかかった住宅の応急修理
  F 生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与
  G 学用品の給与
  H 埋葬

など広範囲に及ぶ法律です。そのうちのEの「災害にかかった住宅の応急修理」のための認定基準の段階が全壊・大規模半壊・半壊・一部損壊となります。

 災害による住家被害は、市区町村が調査を実施して、被害の程度が記載された「罹災証明書」を発行します。罹災証明書は、、税の減免、各種手数料・使用料の減免、各種貸付金・融資の支援、保険金の支払い等を受けるための被害を、公的に証明するものとなります。全壊の認定を受けると、仮設住宅の供与や家屋の撤去費などの支援を受けることができます。

 一方、大規模半壊・半壊・一部損壊の認定を受けると、応急修理の支援等を受けることができますが、その被害の程度に応じて、支援される金額も違ってくることになります。マスコミ等で良く報道されるのは、再調査の結果、被害の程度が上がった場合などですね。また、液状化に対する認定が先般、変更されました。

 災害に係る住家の被害認定の運用基準等は、内閣府の防災情報のページ
          (http://www.bousai.go.jp/hou/unyou.html)をご覧下さい。

ピンクの花みずき/福島市内

松川浦にて
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029 地震保険について その6/いろいろなケース(2011年5月12日) 

昨年亡くなった--

--大高正人の--

--福島県立美術館

飯坂温泉で見た不思議な建物

再び相馬/松川浦にて
■混構造の場合

 混構造の場合は、バリュー案分をします。それぞれの面積別に建設費用を掛けて建物全体価格を算出します。全体価格に対する構造別の価格を算出した上で、構造別に認定作業を行い、バリュー案分をするわけです。

■大きな建物の一部が契約されている場合

 例えば大きな共同住宅があるとします。地震保険の契約者が区分所有をしている場合、保険対象の部分だけではなく、全体を認定しなければなりません。

■契約日による違いがある場合

 生活用動産(家財)の保険は、1995(平成7)年12月31日以前の契約の場合、保険金の支払額が異なります。

■保険金の支払い限度

 一回の地震等により、損害保険会社全社が支払うべき総額が5.5兆円を超えた場合、支払い保険金は、5.5兆円を限度として案分されることになっています。

    

 実際には、総額が5.5兆円を超すことはないだろうといわれています。現実に、支払い作業は既に、執行され続けていますし、後から案分した分を返せというのは難しいでしょうね。

■地震保険のかけ方

 地震保険は、単独では契約できません。火災保険とセットで加入する必要があります。また、火災保険の契約期間の中途でも地震保険に加入することができます。地震保険の契約金額は、火災保険の契約金額の30%〜50%の範囲内に制限されます。通常は、火災保険の50%で地震保険をかけられる方が殆どです。

 契約金額の上限があり、建物は5,000万円、家財は1,000万円です。<その1>にも書きましたが、専用店舗・事務所などの建物とその建物に収容される動産は対象となりません。

■地震保険の保険料について

 お住まいの都道府県と建物の構造により異なります。また、割引制度もあります。最も年間保険料(地震保険契約金額100万円当たり)が安かったのが、岩手県・秋田県・福島県・鹿児島県などで、鉄骨・コンクリート造の場合500円、木造の場合1,000円です。今回の震災で料率が変わるかもしれません。最も年間保険料が高かったのが、東京都・神奈川県・静岡県で、鉄骨・コンクリート造が1,690円、木造が3,130円です。こんなに違うのですね。ちなみに、北海道は、青森県や宮城県と同じ年間保険料で、鉄骨・コンクリート造が650円、木造が1,270円です。

 割引制度もあります。免震建物で30%、品確法の耐震等級で、耐震等級3が30%、耐震等級2が20%、耐震等級1が10%の割引です。また、耐震診断の結果による割引もあります。それと、1981年6月1日以降の新築建物は、10%の割引があります。

 その他、地震保険料控除の制度も2007年1月から創設されています。

■火災保険と地震保険の関係

 良く言われますが、火災保険だけにかけていても、地震による発生した火災による被害は補償されません。地震による火災に備えるには、火災保険とセットで地震保険に契約している必要があります。

 また、隣の家からの「もらい火」についてですが、隣の家に重大な火の不始末がない限り、「もらい火」の損害は弁償してもらえません。自分で、自分の家に火災保険を契約していない限り、火災保険の補償を受けることができないのです。

再び相馬/松川浦にて

再び相馬/松川浦にて

再び相馬/松川浦にて

再び相馬/松川浦にて
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028 地震保険について その5/家財(生活用動産)の場合(2011年5月11日)
※枠がある画像をクリックすると画像が開きます
■福島での地震保険査定作業は、一通りの目途がついたため、急遽業務終了となりました。当初は、別な場所に移動ということでしたが、他地域も順調な査定作業が行われているとのことで、札幌に帰ることになりました。5/6に決定し、5/8に帰りました。それで、これからは札幌からのアップということになります。

 福島は、地震・津波・原発・風評と四重苦に攻められていますが、しっかりと前を見つめ、耐えている福島の人々が姿が目に浮かびます。とても気持ちの優しい方が多いのが、一ヶ月強、滞在して感じた福島の方の印象です。一部では、政府や東電に対して、厳しい詰め寄りをしたことへの批判もあるようですが、それはマスコミの取り上げ方に問題があったと私は思います。多様な意見があることは、むしろ良いことだと思います。色々な考え方を出してこそ、知恵が出てくると言えます。

 しかし、東京電力の副社長から、参議院議員を2期勤め、現在東京電力顧問の加納時男氏は、5月5日の朝日新聞で、「低線量放射線は『むしろ健康にいい』と主張する研究者もいる。説得力があると思う。」と語っていますが、この様な人間性を持った人が国会議員だったことに恥ずかしさを覚えます。彼は、「東電をつぶせと言う意見があるが、株主の資産が減ってしまう。金融市場や株式市場に大混乱をもたらすような乱暴な議論があるのは残念だ。」とも述べています。「国の浮沈」を掛けた現状を考える中で、「株主の資産」にどれほどの意味があるのでしょうか。東電は、即刻、彼を顧問職から外すべきです。これは、「意見」というレベルの範疇を超えた、人間性の資質に欠けた人の暴言だと思います。

■それでは、本論に戻ります。
 家財(生活用動産)の認定は、その家財の価格は問題になりません。
 あくまでも、該当する品目があるかどうかです。

1)食器陶器類(全体で5%の損害割合)

  食器陶器類は、以下の5品目です。代替品目はありません。
  これらが損傷した場合は、それぞれ1%の損害割合となります。
  もし所有していないものがあれば、損害割合は案分して増加されます。
  例えば、漆器(1品目)を所有していないとします。
  その場合で、食器と陶器置物が損傷して、食料品と調理器具が無事だった場合、2品目の損害ですから、
  2品目×1%×(5品目÷4品目)=2.5%の損害割合となります。

    @食器
    A陶器置物
    B食料品
    C調理器具
    D漆器

2)電気器具類(全体で20%)

  電気器具類は、以下の8品目です。これらが損傷した場合は、それぞれ2.5%の損害割合となります。

    @電子レンジ・オーブン(炊飯ジャー・食器乾燥機・電気ポットが代替品目)
    Aステレオ・コンポ(CDラジカセが代替品目)
    Bパソコン・ワープロ(プリンタ・スキャナが代替品目)
    Cテレビ(ビデオデッキ・DVDプレーヤーが代替品目)
    Dファンヒーター・エアコン(ストーブ・クーラーが代替品目)
    E冷蔵庫
    F洗濯機(衣類乾燥機が代替品目)
    G掃除機(ミシンが代替品目)

  この計算も同様に、例えば、パソコンやワープロが無いご家庭で、
  炊飯ジャーがテーブルから落ちて損傷、テレビが倒れて液晶画面が損傷した場合、2品目の損害ですから、
  2品目×2.5%×(8品目÷7品目)=5.8%(小数点第1位未満は切り上げ)の損害割合となります。

3)家具類(全体で20%)

  家具類は、以下の5品目です。これらが損傷した場合は、それぞれ4%の損害割合となります。

    @食器戸棚(鏡台・ドレッサー・本棚が代替品目)
    A和・洋・整理ダンス
    Bサイドボード(茶ダンス・仏壇・仏具が代替品目)
    C机・椅子(座卓・座椅子・ベッドが代替品目
    D食堂セット(応接セットが代替品目)

4)身回品その他(全体で25%)

  身回品その他は、以下の10品目です。これらが損傷した場合は、それぞれ2.5%の損害割合となります。

    @カメラ(ビデオカメラが代替品目)
    Aメガネ類(掛け時計・腕時計・電話が代替品目)
    B書籍(絵画が代替品目)
    CCD・レコード・テープ類
    D人形
    E鞄
    F靴
    Gスポーツ・レジャー用品
    Hピアノ(電子オルガン・オルガンが代替品目)
    I装身具

5)衣類寝具類(全体で30%)

  衣類寝具類は、衣類寝具類全体の損害率で損害割合を認定します。
    10%の損害率  3%の損害割合
    30%の損害率  9%の損害割合
    50%の損害率 15%の損害割合
    80%の損害率 24%の損害割合
   100%の損害率 30%の損害割合

 以上により、1)〜5)の損害割合を合計し、80%以上となれば全損30%以上80%未満で半損
 10%以上30%未満で一部損10%未満が無責となります。

福島市内に花みずきが咲いた

安達太良山/二本松から

鬼婆伝説がある安達ヶ原「黒塚」

安達ヶ原の五重塔

飯坂温泉・八幡神社の大わらじ

飯坂温泉老舗の土蔵
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027 地震保険について その4/鉄筋コンクリート造の場合(2011年5月7日)
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菜の花の季節となった福島
鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)及び鉄骨鉄筋コンクリート造、ブロック造、コンクリート系プレファブ造の場合は、まず全損かどうかを査定します。全損となる条件は、以下の通りです。

  @建物全体が倒壊している
  A建物全体が1階で層崩壊している
  B平面的に建物の1/4以上の部分で倒壊している
  C損傷の最も大きな階の調査可能な柱(接合部を含む)または梁の50%超が被害の程度W
  D建物の沈下が100cmを超える、または、傾斜が2.1/100(約1.2°)を超える場合

   被害の程度W:大きなひび割れや鉄筋が露出しているなど

◇全損でなければ、次の査定作業に入ります。

 1)建物の全体の沈下または建物の傾斜の調査
   建物の沈下が100cmを超える場合は、全損となりますが、25cmを超える場合は、
   それだけで半損に該当する20%になります。
   また、5cmを超えた場合は、それだけで一部損に該当する3%になります。
   建物の傾斜が2.1/100(約1.2°)を超えた場合は、全損となりますが、
   1。2/100(約0.7°)を超えた場合は、それだけで半損に該当する20%になります。
   また、0.4/100(約0.2°)を超えた場合は、それだけで一部損に該当する3%になります。

 2)建物の部分的被害の調査

  @柱の被害調査
   建物の柱のひび割れなどの被害を4段階で認定し、階別に箇所数を調査して、
   もっとも損傷の大きな階を損害割合とします。

  A梁の被害調査
   建物の梁のひび割れなどの被害を4段階で認定し、階別に箇所数を調査して、
   もっとも損傷の大きな階を損害割合とします。

  B部分傾斜による被害の調査
   1)の建物全体の傾斜がある場合は該当しませんが、
   部分的な傾斜がある場合は、その床面積を調査します。

   以上から、@とAの高い方の%と他の数値の合計が認定%となります。

鉄筋コンクリート造(壁式構造)の場合は、まず全損かどうかを査定します。全損となる条件は、以下の通りです。

  @建物全体が倒壊している
  A建物全体が1階で層崩壊している
  B平面的に建物の1/4以上の部分で倒壊している
  C損傷の最も大きな階の調査可能または外部壁梁の50%超が被害の程度W
  D建物の沈下が100cmを超える、または、傾斜が2.1/100(約1.2°)を超える場合

   被害の程度W:大きなひび割れや鉄筋が露出しているなど

◇全損でなければ、次の査定作業に入ります。

 1)建物の全体の沈下または建物の傾斜の調査
   これは、鉄筋コンクリート造の場合と同様です。

 2)建物の部分的被害の調査

  @階別に外部耐力壁外部壁梁(開口部がある部分)となる部分に分けて考えます。
   さらに長辺方向短辺方向別に、それぞれを4段階で認定し、最も損傷の大きな階を認定します。
   その上で、もっとも損害割合が大きな値を採用します。

  A部分傾斜による被害の調査
   1)の建物全体の傾斜がある場合は該当しませんが、部分的な傾斜がある場合は、
   その床面積を調査します。

   以上から、@とAの数値の合計が認定%となります。

■その他、壁式プレキャスト構造中高層壁式ラーメン構造などの認定方法があります。

復旧が進む伏拝地区

壊れた塀が変身!
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026 地震保険について その3/鉄骨造の場合(2011年5月6日)
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■鉄骨造の場合は、まず全損かどうかを査定します。全損となる条件は、以下の通りです。

  @建物全体が倒壊している
  A建物全体が1階で層崩壊している
  B平面的に建物の1/4以上の部分で倒壊している
  C建物全体の外壁の50%超が被害の程度W(面外へのはらみ出しなど)
  D建物の沈下が40cmを超える、または、傾斜が3/100(約1.7°)を超える場合

◇全損でなければ、次の査定作業に入ります。

 1)建物の全体の沈下または建物の傾斜の調査
   建物の沈下が40cmを超える場合は、全損となりますが、20cmを超える場合は、
  それだけで半損に該当する20%になります。
  また、10cmを超えた場合は、それだけで一部損に該当する3%になります。
   建物の傾斜が3/100(約1.7°)を超えた場合は、全損となりますが、
  1/100(約0.6°)を超えた場合は、それだけで半損に該当する20%になります。
  また、0.4/100(約0.2°)を超えた場合は、それだけで一部損に該当する3%になります。

 2)建物の部分的被害の調査

  @開口部の被害
   建物の開口部(窓など)の不良・破損状態を3段階で認定し、階別に箇所数を調査します。

  A外壁の被害
   建物の外壁のひび割れ・破損・剥離などを4段階で認定し、階別に箇所数を調査します。

  B部分傾斜による被害の調査
   1)の建物全体の傾斜がある場合は該当しませんが、部分的な傾斜がある場合は、
    その床面積を調査します。

  Cピロティ部の被害
   ピロティ方式の建物の場合のみ、ピロティ柱の傾斜を調査して、その床面積を算定します。

   以上から、@とAの高い方の%と他の数値の合計が認定%となります。

福島市内で咲いた桃の花

文知摺観音の多宝塔

文知摺観音の大わらじ
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025 地震保険について その2/木造の場合(2011年5月5日)
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信夫山から見た福島市内
■木造の査定作業では、通常は、一次査定で認定を完了しますが、微妙な数値となった場合は、
 二次査定を実施します。一次及び二次査定となる木造の主要構造部を上げてみます。

 ○一次査定

 <木造・在来軸組工法の場合>

   @(軸組)の損傷 : 柱の傾斜(3°以上)、柱の割れ(表面に現れた割れが1/3以上の長さ)など
   A基礎の損傷 : 外周基礎のひび割れ・沈下・傾斜・移動など
   B屋根の損傷 : 屋根材の破損・剥離など
   C建物全体の外壁の損傷 : 外壁材のひび割れ・剥離・目地割れなど

 <木造・枠組壁工法の場合>

   @1階の外壁の損傷 : 外壁の亀裂・破断・剥離など
   A1階の内壁の損傷 : 内壁の入隅部のクロスのしわ・目地切れなど
   B基礎の損傷 : 外周基礎のひび割れ・沈下・傾斜・移動など
   C屋根の損傷 : 屋根材の破損・剥離など

  このように同じ木造でも、在来軸組工法と枠組工法では、主要構造部が異なります。
 また、主要構造部以外の玄関ポーチや塀、門、付帯設備などは査定対象となりません。
 その辺を理解していない方や、保険に入るときに聞いていないと怒る方が時々おられます。
 実際に、保険に入るときにしっかりと説明がされているかどうかは、判りません。

 ○二次査定を実施した場合

 <木造・在来軸組工法の場合>

   @柱(軸組)の損傷 : 一次査定の数値が採用されます
   A基礎の損傷 : 一次査定の数値が採用されます
   B屋根の損傷 : 一次査定の数値が採用されます
   C外壁の損傷 : 一次査定の数値が採用されます
   D内壁の損傷 : 建物全体の内壁面のひび割れ・目地ずれ、巾木、回り縁、建具の変形など
   E建物全体の組の損傷 : 床束の浮き、床面の振動、柱・巾木と床の離れが5cm以上など
   F地盤や擁壁等の損壊

 <木造・枠組壁工法の場合>

   @外壁の損傷 : 一次査定の数値が採用されます
   A内壁の損傷 : 一次査定の数値が採用されます
   B基礎の損傷 : 一次査定の数値が採用されます
   C屋根の損傷 : 一次査定の数値が採用されます
   D1階の組の損傷 : 床束の浮き、床面の振動、柱・巾木と床の離れが5cm以上など
   E地盤や擁壁等の損壊

  地盤等の損害には、土盛あるいは廃土の有無や、擁壁の崩壊等の要素が入ります。
 木造在来軸組工法のケースで、一次査定が殆ど無責となり、二次査定で内壁の亀裂等を査定しても、
 内壁の被害程度が2割以上あるか、床組か地盤等に損害がなければ、二次査定で一部損となる
 ケースはごくまれなようです。

信夫山山頂で

信夫山の大わらじ
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024 地震保険について その1(2011年5月2日)

桃の花が満開

古い土蔵は地震に弱かった

破損した木造共同住宅

擁壁と路盤の倒壊が原因か
   地震保険は、併用住宅を含む建物本体と家財(通貨、有価証券、預貯金証書、自動車、30万円を超える貴金属類等は除く)が対象となります。
 店舗や事務所だけの建物は対象となりません。
 地震災害等(津波も含む)による被災者への方々の生活安定に寄与することを目的として制定された「地震保険に関する法律」に基づいて運営されていますが、保険に入っていなければ、もちろん適用されません。
 建物、家財それぞれに加入する必要があります。

 損害の程度により、全損半損一部損無責と4段階の認定があります。
 全損は保険金の100%
半損は保険金の50%一部損は保険金の5%の金額が支払われます。
 無責の場合は、支払いがされません。
 それ以外の中間段階も、加算もありません。
 復旧費用の多可も関係ありません。ですから、保険金が出たからといって、直す必要もありません。
 また、保険金が建物等の時価以上になることは、基本的にありません。

建物の場合

 全 損:主要構造部の損害の程度が50%以上となった場合
     または、焼失もしくは流失した部分の床面積が70%以上となった場合
 半 損:主要構造部の損害の程度が20%以上、50%未満となった場合
     または、焼失もしくは流失した部分の床面積が20%以上70%未満となった場合
 一部損:主要構造部の損害の程度が3%以上、20%未満となった場合
     または、地震等を原因とする洪水等により、建物が床上か地盤面から45cm以上の浸水を受けた場合

 いずれも、主要構造部が査定対象となります。外構や付属舎、門、塀などは対象になりません。建物周りの路盤と擁壁は対象となる場合があります。

家財の場合

 全 損:地震等の被害により、損害の程度が80%以上となった場合
 半 損:地震等の被害により、損害の程度が30%以上80%未満となった場合
 一部損:地震等の被害により。損害の程度が10%以上30%未満となった場合

 また、余震等で認定の度合いが上がるケースがありますが、保険金が支払済みの場合は、再度、保険金が出ることもあります。ただし、全損と認定された場合は、保険金が支払われた時点で契約が完了します。
    

 地震保険の対象とならない塀
 
 瓦の被災が目立つ
 
津波で流された場合は全損
 
津波の被害例

車は地震保険の対象にならず 

オフィスビルにも亀裂

放射能の測定
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023 震災レポート 福島にて その6(2011年4月29日)
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桃の花が咲きました/桑折町

相馬でヒョウが降る

相馬港海岸付近

相馬港海岸付近
 
相馬港(背面は火力発電所)

相馬港海岸付近

相馬港海岸付近

相馬港海岸付近
 
相馬港海岸付近
   再び、相馬方面に来ました。今回は、松川浦の北側の相馬港から新地町へ抜けてみました。昼頃に、突然と空が暗くなり、雷光が大地に刺さり、雷音が轟きました。昼食のために、食堂に入ると<ヒョウ>が降ってきました。その後、叩きつけるような雨が降っています。

 結局、雨は昼食中に上がってくれました。海岸線に出ると、悲惨な状況が続きます。しかしながら、片付けも進んでいるようです。家などの残骸が集積され始めていました。被災した車も集めて、並べられていました。潰れた車もあります。しかしながら、相馬港に並べられていたテトラポットは、整然とした姿をとどめています。頑丈なことを再認識しました。

 背面に見える相馬火力発電所は、操業を停止しているそうですが、被害等の状況は不明です。直前にある防風林がかなり残っていますので、津波はそれほど押し寄せなかったのでしょうか。その手前の道路やフェンスはかなりの被害を受けています。よく見ると、港から燃料を輸送する施設が破断されていました。これでは、操業をすることは難しいものと思われます。

 翌々日も新地町に来ました。しかも大戸浜という海岸に近い場所です。一帯が基礎を残したがれきの状態になっていました。船や車も点在して残されています。この辺は、まだ片付けが余り進んでいない様です。道路が寸断されていて、目的地にたどり着くのに苦労しましたが、訪ねた家は、隣の家まで津波が押し寄せたそうです。少し高台にあったために助かったとお聞きしました。黒いうねりとしぶきの津波を思い出すだけで、今も身震いしてしまうそうです。2〜3分、待避が遅れたなら、助からなかったと仰っていました。1週間前にもすぐそばで遺体が見つかったそうです。自衛隊の方達が捜索をされている光景も目にしました。

 福島では、桜の季節が終わり、桃の花が開き始めました。林檎や梨の花も咲き始めました。いつもであれば、実りの季節を楽しみにすることができるのですが、風評も含めた、被害が暗い影を投げかけています。自然のいとなみは、確実に繰り返していきます。
      
 
相馬港海岸付近
 
相馬港海岸付近
 
相馬港海岸付近

相馬港海岸付近

相馬港海岸付近

新地町大戸浜 
 
 新地町大戸浜

新地町大戸浜 

新地町大戸浜

新地町大戸浜 
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022 震災レポート 福島にて その5(2011年4月26日)
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相馬の自衛隊駐屯地

南相馬市鹿島地区

南相馬地市鹿島地区
南相馬市鹿島地区
   南相馬市に向かいました。警戒区域となった20kmの立入禁止区域には入りませんでしたが、緊急時避難準備区域となった30km以内の、以前の屋内避難を指定された区域に入りました。福島市内方面は雨足が強かったのですが、南相馬市方面は、雨が殆ど上がっていました。雨の中の作業は、濡れないように、カッパを着て、傘をさしての作業となります。建物の地震被害調査ですから、狭いところにも入らなければなりません。雨のために、福島全域で作業中止とした会社もあるようです。放射能の線量では、値が小さい南相馬市ですが、余り気分の良いものではありませんので、雨が殆ど上がったことは助かりました。

 南相馬市方面は、意外にも車が多数、往来していました。土曜日のせいもありますが、一時、ゴーストタウン化していた町に、多くの人が戻っているそうです。荷物だけを取りに戻ったという方もいました。南相馬市北に位置する、相馬市付近には、自衛隊の仮駐屯地もあり、車両やテントが多数並んでいました。自衛隊やパトカーの姿を除けば、普段と変わりない雰囲気があります。道の駅や食堂なども、通常に近い営業をしているようです。

 南相馬市の海岸線に行ってみると、私の記憶では住宅街があったところが、何もない更地となっていました。水田も津波に浸かり、被害ははかり知りません。津波が到達したと思う地点には、横倒しとなった漁船が多数、散在していました。沖に出遅れた漁船が、津波に押し戻されて、陸地の奥まで流されて来て、助かったそうです。しかし、震災当時は、遺体があちらこちらで見られたと言う話もお聞きしました。

南相馬市鹿島地区
 
南相馬市鹿島地区 
   
かつての鹿島地区
 30年前に、私が建設に関わった南相馬市鹿島地区の海洋センターは、予想通り、回復不能の状態となっていました。プールは、基礎だけが残り、プール(アルミ製)本体は、破断されて、つぶれた状態になっていました。わずかに子供用プールが、変形はしたものの原型を思い出すように残って、離れたところに流されていました。その他の施設も無残な状態です。建物の前にあった「孝子の象」は、台座だけが残り、象本体は、破壊された海岸線に無残な姿でうち捨てられていました。

 南相馬市の原ノ町で、北海道へ避難した人の話を聞きました。当初、20kmから30km圏内の人が北海道へ避難しようとしたところ、断られたそうです。屋内避難地域の人を断る方針だったようです。その後、認められたらしいのですが、ほとんど北海道には被災者は避難されていません。何か、やるせない思いがしました。

 翌日の福島市内は、空が晴れ渡りました。先日降った雪により、短くなっていた吾妻小富士の雪ウサギの耳が復活していました。逆光のため、写真では判りづらいのですが、うっすらと見ることができます。この後は、暖かい日、寒い日が繰り返されるのでしょう。桜の花も終わりの兆しが見えてきましたが、桃の花が満開に近づいてきました。りんごの花も、つぼみが開きかけています。風評を含めた、放射能被害さえなければ、美しい季節がやってきます。自然は、いつもと変わりなく花を咲かせ、実を付けてくれます。

更地となった鹿島地区
 
かつての海洋センター

流された海洋センター
 
流された海洋センター

銅像の台座だけが残る

銅像がここにあった

耳が復活した雪ウサギ
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021 震災レポート 福島にて その4(2011年4月24日)


福島市伏拝地区

福島市伏拝地区

伊達市桑折町にて

茶屋沼の桜
   
伊達市桑折町の崖地
 地盤崩壊があった、福島市内の伏拝(ふしおがみ)地区の近くに行くことがありました。築30年近くの住宅が並ぶ、一見普通の住宅街です。とても地盤崩壊が予想された地域とは思えません。聞いた情報では、谷地部分が、水道管の破裂を初因として、流されたと言うことですが、情報入手が限られた現在、正確なことをお伝えできません。いずれにしても、30年も平穏な生活を送っていた住宅街の一部が、一気に流された事実があります。崖の上から見た、アスファルトのうねりや、倒れた電柱、半分埋め込まれた住宅や車の姿に愕然としました。崖の下から見た、住宅が簡単に流される自然の驚異も驚きです。しかし、死亡者がいなかったことは、せめてもの幸いと考えざるを得ません。

 日が変わり、伊達市内の桑折町に行ったのですが、ここでも崖地の崩壊直前の姿がありました。一見、普通の住宅街なのですが、広い水田に面する傾斜地に造成した住宅街です。その斜面の一部が崩壊直前の姿になったのです。延長で数百メートルある擁壁の頂部の家の一軒が崩落直前になっていました。家には、建築物応急危険度判定士による赤い張り紙がしてあります。家の周りの地盤には、深い亀裂が入っていました。家自体も傾斜しているようです。現在は無事でも、同じような条件の家がたくさんあります。不安な日常と過ごされていることと思います。

 同じ伊達市内で、放射能汚染の風評による事業規模縮小の嵐が吹き荒れている事実を知らされました。初めてお会いした方が、今日、解雇になりましたと、涙を浮かべながら語ってくれました。ごくごく普通の生活を送っていた方が、風評により、多大な経済的影響を受けているのです。何らかの対策が望まれます。否、何とかして貰いたいものです。
 
伊達市桑折町の崖地
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