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020 震災レポート 福島にて その3(2011年4月21日) |
※枠がある画像をクリックすると画像が開きます |
二本松市内の桜 |
福島市伏拝の崖崩れ |
相馬の海岸地域・道路に船が |
相馬の海岸地域 |
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二本松市に行きました。福島から、車で40分程、南に下がった街です。途中に見えた福島市伏拝(ふしおがみ)の崖崩れは、かなりの規模です。数軒の家が地盤の崩壊ととともに流されたようです。テレビでも放映されていました。二本松市内では、見事な桜が印象に残りました。 次の日は、相馬方面に行きました。町中は、一見、平穏な状態に見えます。折角の機会なので、海側に行ってみましたが、テレビ等で見た地獄絵が広がっていました。恐ろしい景色です。津波の威力を改めて感じさせられました。未だに、海中に浮かぶ車や横倒しになった船、津波で破壊された壁、何も無くなりがれきの山となった所、津波に洗われた水田、ちょっとしたきっかけで助かった家々、語りつきない景色が広がっていました。 相馬に行った時に、ある人から聞いた話ですが、東京に避難した子供が、東京の子供に「被爆者」と言われたそうです。事実であれば、許し難いことです。子供がそう言ったならば、子供だけのせいにもできないでしょう。そういった風評は、ぜひ止めて貰いたいものです。その方は、東京の電力の大部分を福島が供給しているとも言われていました。さらに、テレビで近々大きな地震が必ずくると言った人がいるらしく、皆さんが不安な日々を過ごしているようです。 帰りの峠道では、季節外れの雪になりました。数日前には、気温25度を記録したばかりです。車は、夏タイヤですから、運転手さんは、慎重な運転を求められます。対向する車も、ほとんど夏タイヤでしょう。峠を下った、福島市内では、雨に変わっていました。 |
相馬の海岸地域 |
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相馬の海岸地域 |
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中村街道の峠道・雪景色 |
相馬の海岸地域 |
相馬の海岸地域・海中に車 |
相馬の海岸地域 |
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019 震災レポート 福島にて その2(2011年4月18日) |
福島市内に咲いたモクレン |
福島市内から吾妻山方面 |
吾妻小富士の「雪うさぎ」 少し耳が短くなりました |
国見町で |
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桑折町で |
このところ、福島市に近い、桑折町や国見町、川俣町に連続して通っています。桑折町と国見町では、地震による被害が目立ちます。建築物応急危険度判定士による張り紙が時々目に入ります。古い建物では、一部が倒壊して、赤い張り紙と共にロープを回している建物がありました。川俣町は、地震の被害もさることながら、風による?放射能濃度が強く、一部が計画避難地域に指定されるようです。 この辺の町の人々は、一見、普通の生活を送っているように見えますが、不安を感じていることと思います。福島では、吾妻小富士に雪渓が形作る「雪うさぎ」が現れたころに田起こしをするそうです。しかし、一部の農家を除いて、未だにそのままになっている水田や畑などが目立ちます。これからなのでしょうか。 4月16日の土曜日には、福島市内の花見山公園で桜が満開近くになりました。山全体が桜のような景観を見せてくれます。梅やこぶし(モクレン)の花も咲いていました。例年よりは少ないそうですが、花見の人たちが多数来ていました。地震が続く毎日ですが、気分転換になって頂ければ幸いです。 たまたま、福島市民会館の近くに行きましたが、建物が老朽化しているため、立ち入り禁止になっていました。連窓のサッシ部分が破損しているようです。さらに、横から入る箇所にもロープが張ってありましたので、建物自体の強度に不安もあるのでしょうか。 伊達市にある福島学院大学の建物が倒壊したと聞いていましたので、横を通った時に寄ってみました。3階建ての2階と3階部分が倒壊したのですが、既に解体作業中でした。地震時は、人も居たそうですが、無事に助け出されたようです。私が行ったときには、横にある桜が見事に咲いていました。テニスコートでは、楽しくテニスに興じている姿が、不思議感を演出していました。案内看板には、すでに解体中の校舎を消して、仮校舎が描いてありました。 福島市内でも、液状化現象により歩道のマンホール等が盛り上がった地域も、一部にはありますが、福島学院大学の例も含めて、このような例はごくまれです。多少の亀裂等の損壊はありますが、総じて通常の状態を維持しているといえます。普段通りの生活を、みなさんが心がけているようです。 このところの陽気で気温が25度前後まで行ったせいか、4月末頃と聞いていた桃の花が、少し早く咲き始めています。確実に、暖かい季節がやって来ています。 |
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伊達市諏訪野の桜 |
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花見山公園 |
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花見山公園 |
福島学園大学の解体現場 |
福島市内の液状化現象 |
福島市内で咲き始めた桃の花 |
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018 震災レポート 福島にて その1(2011年4月15日) |
福島市内から奥羽山脈を見る |
福島に入って、10日目になりました。通信環境が整わず、インターネットに接続することもままなりませんでした。山間部に近い、宿泊場所では、今も接続はできません。 私が初めて入った、4月6日頃の福島市内の状況は、ニュースで感じていたほどの悲壮感はありません。数日前に、ガソリンがかなり自由に入手できるようになったことなどが、明るい雰囲気を醸し出しているようです。その2〜3日前までは、ガソリンスタンドでは、満タンではなく、3,000円までといった制限が、長蛇の列にも関わらず行われていたそうです。 福島市から海岸に向かうほど被害状況が高いようです。私が行った伊達市などでは、本瓦の建物のかなりの家屋で、ブルーシートを貼った状態が目に付きます。地震の揺れにより、相当数の瓦が動いたものと思われます。屋根の瓦の過半が落ちた家も多数ありました。特に、古い木造の建物は、外壁に亀裂が目立ちます。土塗りの古い家屋で、家全体が完全に傾いたものもありました。 新しい建物は、意外と外壁に損壊等が見えていないものが多いのですが、中に入るとボード等のジョイント部などに大きな亀裂が目立ちます。棚に入っていたものがかなり散乱したようで、その雰囲気が未だに残っています。特に、物が倒れないように、住宅の中で、長いものは横に置いたりなどして対策を取っているお宅が目立ちます。 それほど、地震の影響を受けていないなと思ったお宅でも、エコキュートの配管が破損したため、地震発生以来、未だに自宅のお風呂に入られないという状況もありました。修理をして貰いたくても、部品が届かないそうです。 福島市内でも、地盤が悪い地域では、液状化により、マンホール等が列を浮上している景色も見られました。その中で、桜がちらほらと咲き始め、暖かさを感じる季節となってきました。こちらに来て知ったのですが、裁判所の横にある、名物のしだれ桜が、五分咲きとなっていました。 与えられた業務は、地震保険に入っていたお宅の建物や家具の保険被害の査定です。該当物件が多いため、早い査定と早い保険金の払い出しが求められています。一日、3〜4件程度の家屋を廻っています。こちらに来るまでは、木造が中心となると聞いていましたが、私の経歴からか鉄骨造が多く、たまに鉄筋コンクリート造もあります。もちろん木造の在来軸組工法や枠組工法もあります。 たまたま伊達市保原町や伊達郡川俣町の担当となる日が複数日あり、新聞情報などで放射能の拡散濃度が高い地域も廻っています。現地の人たちは、注意はしているのでしょうが、日常とそれほど変わらない生活が続いているようです。福島市内で線量計を携帯している人がいましたが、4月10日ころで、約1.2〜1.5マイクロシーベルトの数値をカウントしていました。 |
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福島市内の屋根の被害状況 |
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伊達方面の屋根の被害状況 |
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倒壊した伊達市内の家 |
被災した伊達市内の家 |
福島裁判所前の桜 |
福島市内での線量計データ |
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017 構造用パネルについて(2011年4月3日) |
■構造用パネルとは 一般に構造用パネルといえば、OSBボード(配向性ストランドボード Oriented Strand Board)のことをいいます。原料となる広葉樹(ポプラ・アスペン等)の木片(ストランド)に方向性を与えながら層を形成したものを、接着剤で高温圧縮します。さらにそれを、方向性を変えて積層した木質系ボードがOSBボードです。成長が早い材種を使っているので、環境に優しいとメーカーは謳っています。右の表(※1)は、壁に構造用合板を、屋根にOSBボードを張った例です。 北米で開発されたため、日本には輸入住宅とともに入ってきました。1987(昭和62)年には、JAS規格も定められています。価格の面から国産品は殆どなく、輸入品が流通しています。JASの格付実績をみても、2007(平成19)年の認定工場の9工場が全て外国製造者です。国内流通量は、2007(平成19)年は、16万2千u(格付数量は24万5千u)。主に、カナダ産とポーランド産が主流のようです。 ■構造用パネルの等級と強度とサイズ 構造用パネルの等級は、構造用合板のような品質や強度で分けられていません。該当する厚さによる等級(※2)があるだけです。基本的に品質はすべて同じだということでしょう。
構造用パネルの強度は、JASによると表(※3)のようになっています。単純に比較はできませんが、構造用合板よりは若干劣るようです。 また、サイズも大判からカットするため、多様なサイズが可能とのことです。カナダのさる工場では、12フィート×24フィート(3,660mm×7,320mm)から切断するそうです。尺モジュールとメーターモジュールに対応していて、 (尺モジュール) 9.5mm厚さ(4級) 910mm×1820mm(3尺×6尺) 910mm×2730mm(3尺×9尺) 910mm×2745mm(3尺×9尺) 910mm×3030mm(3尺×10尺) 910mm×3050mm(3尺×10尺) 12mm厚さ(3級) 910mm×2730mm(3尺×9尺) 910mm×2745mm(3尺×9尺) 910mm×3030mm(3尺×10尺) 910mm×3050mm(3尺×10尺) (メーターモジュール) 9.5mm厚さ(4級) 1000mm×2730mm 1000mm×2745mm 1000mm×3030mm 1000mm×3050mm といったサイズがあるようです。 ■構造用パネルの拡散化学物質について JAS規格では、ホルムアルデヒド拡散量についての表示基準が定められています(※4)。これは、構造用合板とまったく同じ基準です。それ以外の揮発性有機化合物に関する数値は、見あたりませんでした。JASでは、規制していません。JASマークの参考例が表(※5)です。 また、防虫・防腐。防蟻についての資料を捜したのですが、見あたりませんね。OSBボードメーカーのカタログ等を見ると、防虫・防腐・防蟻に優れていると出ていますが、言葉だけですね。 ■壁倍率、壁強さ倍率、存在床倍率について 建築基準法による壁倍率は、「構造用合板について/壁倍率」の表のように、構造用合板も構造用パネルも同じ値になっています。木造軸組工法の耐力壁の直張りで、いずれも2.5倍です。 日本建築防災協会「木造住宅の耐震診断と補強方法」によると、構造用パネルの壁強さ倍率(kN/m)は、5.0倍になっています。構造用合板が5.2倍ですから、若干劣る程度です。また、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)の存在床倍率は、構造用合板と同じ値になっています。 また、構造用パネルの床にも、根太及び火打ちなし工法があります。カナダ産JAS構造用パネルのAPA(エンジニアーウッド協会)認定の数値をみると、表(※6)のような存在床倍率になっています。いくつか細かい条件があるのですが、構造用合板よりも有利な値が出ています。ちなみに、構造用合板のは、根太及び火打ちなしで24mmの構造用合板を床に張った場合、四周釘打ちの場合で3倍、川の字型(短辺方向のみに釘打ち)した場合で1.2倍の存在床倍率です。 |
構造用パネルの施工例 (※ 1) 下の壁が構造用合板、上の屋根下地が構造用パネル(OSB) |
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構造用パネルの強度/JASより (※3) |
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と基準値/JAS規格(※4) |
構造用パネルのJASマーク例 (※5) |
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カナダ産JAS構造用パネル(APA認定より) |
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016 24時間換気について(2011年4月1日) |
■高気密住宅とは 次世代省エネ基準(住宅に係るエネルギーの使用の合理化に関する設計、施工及び維持保全の指針)が2009(平成21)年に改訂されました。この改訂の大きなポイントの一つは、2cu/uor5cu/u(全国を地域分で設定)以下に定められていた「相当すき間面積」基準(いわゆるC値)が削除されたことです。気密性を高め、省エネルギー効果と快適性を求めた、次世代省エネ基準の高気密の基準がなくなったのです。断熱主体の基準になったともいえます。逆にいえば、断熱を確保すれば、気密は当然確保できるということでしょうか。 住宅金融支援機構の木造住宅工事仕様書を見ても、結露防止のための「通気層」と「気流止め」は出てきますが、気密に関する項目は見あたりません。それだけ、高気密住宅が当たり前になったのでしょう。ハウスメーカーの実測値を見ますと、0.7とか1.2cu/uの気密性を誇っている情報がNET等に出ています。仮に、旧基準の2cu/uのすき間相当面積で、内外の温度差20°Cですと、外気の風速によっても異なるのですが、概ね0.13回/h程度の換気回数といわれています。5cu/uですと、同条件で0.33回/h程度です。 ですから換気回数だけを考えると、高気密住宅といえども、まったく換気をしていない訳ではないのです。問題は、その給気がどこからくるのかだといえます。例えば、ホルムアルデヒド発散等級が高い家具(建築基準法で規制されていない)を入れた場合、気圧の低い室内にホルムアルデヒドが充満してしまうことになります。如何に、外気へ排出するかが、大事かということです。シックハウス対策の換気システムは、住宅内部での気流交換も排除しているのです。 ■換気回数とは 「シックハウスについて」でも書きましたが、2003年の建築基準法の改正により、原則として「24時間換気システム」が義務づけられました。必要な換気回数は、表(※2)の基準です。 この換気回数とは、居室空間の容積(気積)が1時間当たり、何回、外気と入れ替わるかということです。0.5回/hとは、1時間に0.5回、すなわち2時間に1回、居室空間の空気全体量が外気と入れ替わることです。かつての本州方面のほとんど断熱をしていない住宅では、1時間当たり、数回の換気が行われていたといわれています。しかし、0.5回/hという換気回数も暖房方式や生活環境によっては、決して多い数値ではありません。季節によっては、窓を開けて空気を交換する生活スタイルもあって良いのではないでしょうか。 ■換気方式による分類 右図のように、第1種から第3種の方式があります。 1)第一種換気方式:給気も排気も機械式換気による (※3) 機械式換気による排気は、絵では直接外気に排気 していますが、ダクト等を経由する方法でも 同じです。 2)第二種換気方式:給気は機械式、排気は自然排気 (室内が正圧になる) (※4) 住宅ではあまり使われません。手術室とかクリー ンルームなどで使われます。 3)第三種換気方式:給気は自然給気、排気は機械式 (室内が負圧になる) (※5) 24時間換気システムとしては、相対的に廉価 な手法です。 ■換気システムによる分類 4)個別換気システム:居室の区分ごとに換気を考えるシステムです。居室の区分毎に換気扇等がありますので、少し音が気になると思います。 5)集中(セントラル)換気システム:住戸全体で、1つのシステムで換気を考えるシステムです。通常は、ダクトでつながります。また、フロア毎に換気システムを設置する場合もあります。 ■ダクト方式による分類 6)ダクト方式:居室の天井に付いた給排気口を天井裏等のダクト配管で機械式換気装置とつなぐものです。 7)ダクトレス方式:ダクトを使わないで、換気をする機械式換気です。建物全体をダクトに見立てている訳ですから、換気計画をしっかり立てなければなりません。 ■換気装置による分類 8)冷暖房一体型換気装置システム:暖房もセットになっているシステムですが、寒冷地に住む私は、実際に見たことがありません。第一種換気方式になります。 9)熱交換型換気装置システム:多少高価ですが、お勧めの方式です。全熱交換機(三菱電気製の商品名がロスナイ)と呼ばれる換気装置に内蔵されている熱交換器により、入ってくる空気と出ていく空気の熱だけを交換するシステムです。第一種換気方式になります。また、交換器の方式により、全熱型と顕熱型の二つがあります。 全熱型は、給気と排気の熱交換ばかりでなく、湿度(潜熱)も交換します。そのため、臭いが残るという欠点があるといわれています。交換素子は紙製です。 一方、顕熱型は、湿度を交換しませんから、臭いが戻るということはないといわれています。さらに、湿度は原則的に出ていく一方ですから、室内が乾燥しやすいという欠点があるでしょう。交換素子は樹脂製か金属製です。熱効率とVOC(揮発性有機化合物)対策は、一般にこちらが高いでしょう。 10)排気形換気装置システム:単に強制排気だけを行っているシステムです。熱が同時に逃げるため、寒冷地向きではありません。第三種換気方式になります。 以上のように、24時間換気システムは、1)〜10)までの方式・システムが混在する多様なシステムがあります。メーカーによっても、独自の方式を謳ったりしています。さらに、天井裏や床下の温度差を利用して空気を循環させる方式や、それらのハイブリッド的な方式などもあります。お住まいになる地域によっても、条件が変わってくるといえるでしょう。 ■パッシブ換気システム 一種のダクトレス方式ともいえます。基礎断熱により、床下空間を室内と同条件として、床下暖房機を設置。床下給気口から取り入れた空気を、床下暖房機で暖めて室内空間に送る。屋根最上部に設置した断熱排気筒からは、排気を行う。その温度差を利用して、空気を循環させることにより、換気と暖房を同時に行うシステムです。24時間換気とは異なる範疇かも知れませんが、北海道発の暖房換気システムです。 ■24時間換気の問題点 これは、「再び、シックハウスについて考える」でも書きましたが、メンテナンスの問題が最大の問題だと思います。フィルターの清掃はもちろん、給排気口の清掃は必須条件です。フィルターや給排気口が目詰まりを起こしていれば、能力の減少はもとより、逆効果も懸念すべきでしょう。設計事務所や施工店の説明はもちろん必要ですが、ユーザーも取扱説明書を良く見るべきものだと思います。 24時間換気は、システムにもよりますが、電気料金が500〜1,000円/月程度だといわれています。スィッチを切ることを勧める施工店があるらしいことは残念(ネットを見ると出ていますね)なことですが、使ってメンテナンスをし続けることが、環境を維持することでもあり、システムを長持ちさせることにつながると思います。 ただ、建築基準法で決められているから付けるのではなく、予算と用途に応じて換気システムを選ぶ必要があるでしょう。 |
<C値 相当すき間面積 が削除された> |
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有効換気量が必要有効換気量以上となる機械換気設備 (建築基準法) (※2) |
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第一種換気方式 (※3) <給気が機械式、排気も機械式> |
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第二種換気方式 (※4) <給気は機械式、排気は自然> |
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第三種換気方式 (※5) <給気は自然、排気は機械式> |
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美瑛の丘にて (2010年6月22日撮影) |
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015 シックウハウスについて(2011年3月29日) |
■シックハウスとは シックハウス症候群(Sick House Syndrome)は、建材や家具、日用品から発散する揮発性の化学物質によって、目がチカチカしたり、喉が痛くなったり、めまいや吐き気、頭痛、倦怠感、湿疹などの症状が現れることです。建築基準法で規制されている化学物質を含めて、厚生労働省は13物質について、濃度指針値を定めています。また、人によっては指針値以下の濃度でも発症することが知られています。 現代において、さまざまな化学物質を使用した建材や家具が現れたこと、住宅の気密性が高くなったこと、ライフスタイルが変化し換気が不足しがちになったことなどが反映されているといわれています。時代劇を見ると、いつも開けはなった縁側で微睡んでいる光景を描いていますね。 しかし、「花粉症」にも見られるように、原因となるものが「花粉」であっても、受ける側の人体が、何らかの要因によって影響を受けていることを疑うことは否定できないと思います。化学物質過敏症なども似た症状ですが、いずれも時代が生んだ「病い」といえるでしょう。とはいえ、原因物質を野放しにするわけにはいきません。いかに原因物質を特定し、あるいは削減・滅失する努力をしなければならないのではないでしょうか。 「月曜病(ブルーマンデー病)」といわれる病気があります。休日明けの出社に対するストレス病とされていました。今でも、それがすべてと信じている人がいます。しかし、<「住宅設備・家電」が危ない!/住宅が危ない!シリーズ/足立博/(株)エクスナレッジ>のP.42には、 和製英語である「シックハウス」の語源となっている「シックビルシンドローム」とは、もともとは月曜日に出社する社員の体調が悪くなる傾向があるということで、当初は月曜病などと呼ばれ、ストレス説が強かったのですが、その後の調査で、土日に止められた空調設備のダクト内部にカビなどが発生し、それが月曜日の運用とともに吹き出されて、社員がそれを吸って害を被っていた、ということが分かってきました。 このように、「心の病」と決めつけていたのが、実は物理的な原因物質によるものだったと判ったのです。もちろん、「心の病」のケースもあるでしょう。単純に決めつけてはいけないということなのです。むしろ複合して、起きているというのが実態だと私は考えます。 ■厚生労働省による「化学物質の室内濃度指針値」 表(※1)の13物質の指針値が出されています。この指針値についての厚生労働省のQ&A(2004年3月30日/厚生労働省医薬食品食審査管理課化学物質安全対策室)を見ると、 室内濃度指針値とは、「現状において入手可能な科学的知見に基づき、人がその化学物質の示された濃度以下の暴露を一生涯受けたとしても、健康への有害な影響を受けないであろうとの判断により設定された値」です。 とのことです。判るような判らないような説明ですね。放射能の説明を思い出します。 これらの物質は、表(※2 改正建築基準法に基づくシックハウス対策の概要/国土交通省より)のような沸点にあり、50°C〜250°Cの範囲にあるものをVOC(揮発性有機化合物 Volatail Organic Compounds)というのですが、広義にはこれらの有機化学物質全体(VVOC、VOC、SVOC、POM)を含めてVOCとのされることもあります。ちなみに、世界保健機構(WHO)では、約50物質についてガイドラインを定めているそうです。 また厚生労働省では、この13物質の指針値と同時に、TVOC(総揮発性有機化合物 Total Volatile Organic Compounds)も規制しています。数値は、400μg/m3(0.4mg/m3)ですが、暫定目標値とされています。総揮発性有機化合物が対象ですから、13物質以外の物質も入ってくるでしょうね。かなり曖昧な基準です。以前は、この指針値自体に何の意味があるのかなと思っていましたが、福島原発の問題の様に、問題が起こったときには必要な基準だということが判りました。 ■建築基準法によるシックハウス対策 2005年7月の改正建築基準法により、シックハウス対策が盛り込まれました。ただし、建築基準法による規制は、ホルムアルデヒドとクロルピリホスの2品目に対してだけです。 ○ホルムアルデヒドに対する規制 1)内装仕上げの制限 内装仕上げに使用するホルムアルデヒドを発散する建材に 対して、建材の種別によって制限されました。 2)換気設備設置の義務付け 原則として、全ての居室に機械換気設備の設置が義務付け られました。 3)天井裏などの措置 天井裏、床下、壁内、収納スペースなどから居室へのホルム アルデヒドの流入を防ぐための措置が必要になります。 ○クロルピリホスの使用禁止 居室を有する建築物には使用が禁止されました。 あらかじめ添付した建築材料ももちろん使用禁止です。 また都道府県により、確認申請や完了検査における提出書類にもかなりのバラツキがみられる(日経ホームビルダー2004年7月号)との情報もあります。輸入建材に対する取扱も、禁止しているケースと、資料などに安全性が確認できれば認めているケースなどがあるらしいです。その後改善したとの情報には接していません。 ■品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)によるシックハウス対策 品確法に基づいて、任意制度である「住宅性能表示制度」を利用した場合には、以下の6物質について、室内化学物質濃度測定が「選択事項」として位置づけられました(5物質だったのですが、2000年10月からアセトアルデヒドが追加されています)。濃度を測定し、その結果を測定条件とともに表示することになっています。 1)ホルムアルデヒド 2)アセトアルデヒド 3)トルエン 4)キシレン 5)エチルベンゼン 6)スチレン また、ホルムアルデヒドについては、発散速度に応じた等級が定められています。 等級3:ホルムアルデヒド発散速度 0.005mg/m3/h以下 等級2:ホルムアルデヒド発散速度 0.020mg/m3/h以下 等級1:該当なし これは、建築基準法に定められた、建築材料の区分の数値を元としていると思われます。 ■JISとJAS、大臣認定について JIS(日本工業規格)では、シックハウス対策にあわせて、E0、E1などとしていた等級をF☆☆☆、F☆☆に統一しています。対象品目は、壁紙、壁紙施工用でんぷん接着剤、パーティクルボードなど45品目に渡っています。また、JISで規定されたのは、F☆☆等級以上で、内装仕上げに使用禁止となっているE2規格に相当するF☆の設定はありません。(※3) 同様に、JAS(日本農林規格)においても、合板、集成材、フローリング、単層積層材、構造用パネルについて、等級表示がFc0、Fc1などとしていたものがF☆☆☆、F☆☆などに統一されました。(※4) 大臣認定とは、JISやJASで規定されない資材についての対応です。指定性能評価機関に申請し、性能試験を受け、約2ヵ月後の性能評価書の発行を受けて、国交省に大臣認定の申請を行うものです。JIS規格の認定を取得していない工場の製品や輸入品などを対象としているようです。これは、一回限りの試験で大丈夫かとの意見もあります。(※5) ところで、それ以外の<F☆☆☆☆など>があるのです。各工業会が自主表示をしているマークがあるのです。ですから、単にF☆☆☆☆が付いているからと安心するわけには行きません。必ず、どこのマークなのかを確認する必要があります。もちろんデータ等を確認する必要もあるでしょう。(※6) ■シックハウスの要因 シックハウスの要因は、定められていないというのが正解でしょう。厚生労働省が定める化学物質以外の化学物質もあります。それが、TVOC(総揮発性有機化合物)の総量暫定目標値にも現れています。また、シックハウスの定義を広めると、カビやダニやペット、そしてハウスダストまでが起因するという考え方もあります。受容する人への環境からの影響まで考えると際限がありません。しかも規制値以下でも発症する人がいるのです。一つ一つ削減努力をするしか方法がないともいえます。スギ花粉症があるからといって、全てのスギを根絶やしにすることはできません。人の対症療法と同時に、花粉が少ないタイプのスギにしたり、他の樹木に植え替える努力を積み重ねる必要があるのと同じことです。ちなみに、私はシラカバ花粉症です。 ■建築基準法におけるホルムアルデヒド発散建築材料の区分 内装仕上に使用するホルムアルデヒドを発散する建築材料には、表(※7)のような制限が行われています。 ■ホルムアルデヒド発散建築材料の使用面積の制限 建築基準法では、第2種(F☆☆)及び第3種(F☆☆☆)ホルムアルデヒド発散建築材料については、居室の換気回数(1時間当たり)に応じて、表(※8)にある計算式 < N2S2 + N3S3 ≦ A > に収まるように、使用面積の制限があります。第1種ホルムアルデヒド発散建築材料については、使用面積の制限がありません。最近は、F☆☆☆☆の建築材料が増えてきました。特別の条件がない限り、F☆☆☆☆を使うべきでしょう。 住宅の居室とは、住宅の居室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室、家具その他これに類する物品の販売業を営む店舗の売場のことです。また、建具の下をアンダーカットして通気を確保している場合は、換気計画上一体として機能しているため、一つの居室として扱われます。 使用面積とは、床・壁・天井・建具に使われている建築材料すべての面積です。下地にF☆☆☆の構造用合板を使って、F☆☆やF☆☆☆の仕上げ材を張っている場合は、それぞれの係数(N)を掛けた両方の面積が合計されます。壁紙等がその上に張ってある場合は、さらに加算されます。 室内にある扉(キッチンの扉など)も面積に含まれます。ただし、物入や押入の内部は別な部分として計算されます。 柱、回り縁、窓台、巾木、手摺、鴨居、敷居、長押等の造作部分、建具枠や部分的に用いる塗料、接着剤は規制対象外となります。ただし、柱等の軸材の露出する部分の面積が、室内に面する面積の1/10を超える場合には、面的な部分として加算されます。 しかし、入居後に入れられる家具については、建築基準法の対象となりません。家具を原因とするシックハウス症候群も発症していますので、計算以前の問題として留意しなければなりません。 ■天井裏などの制限 建築基準法では、天井裏、小屋裏、床裏、押入、物入、その他の収納スペースには、居室へのホルムアルデヒドの流入を防ぐために、次の1)〜3)までの、いずれかの措置を義務付けています。ただし、アンダーカットなどで居室とつながっている場合は、居室に含めた全体の計算が求められます。 1)F☆☆☆以上の建材を使用する(F☆☆は使用できない) 2)気密層または通気止めを設けて、居室と区画する 3)居室以下の空気圧となるような換気装置を設置する これも現実的には、1)の方法でしょう。実際には、F☆☆☆☆を心がけるべきでしょう。3)の方法も有効ですが、常時、3種換気で、外部に排出する必要があります。 ■換気設備設置の義務付け 建築基準法では、2003年の改正により、居室には原則として、次のイ)〜ハ)のいずれかの換気設備を設けなければならないことになりました。これは、ホルムアルデヒドを発散する建築材料を使用しない場合でも、家具等からの発散があるため、機械換気設備の設置義務付けを求めたものです。 イ)有効換気量が次の式に適合する機械式換気設備であること 換気回数が表(※9)以上を確保する必要があります。 ロ)ホルムアルデヒドを所定量浄化できる機械式換気設備を設置する ハ)中央管理方式の空気調和設備で所定量の規定に適合するもの この結果、住宅には「24時間換気システム」が普及することになりました。24時間換気システムには、冷暖房一体型換気装置システム(第一種)、熱交換型換気装置システム(第一種)、排気型換気装置システム(第三種)などがありますが、詳細については、またの機会としたいと思います。 かつての日本家屋では、表(※9)に求められる<0.5回/h>の換気回数は充分に満たしていたといわれています。それでなければ、室内で炭を焚くことはできなかったでしょう。しかしながら、昨今の高気密住宅においては、<0.2回/h>を下回るといわれています。まさにビニル袋の中で生活している訳です。 また、サッシ枠に通気システムを設置した自然換気で<0.5回/h>を充分にクリアするなどの方式も発表されています。メンテナンスのことを考えると、優れた方式と思いますが、これはあくまでも建築基準法をクリアするレベルの換気設計といえます。必要なことは、快適な環境を構築することだと思います。現状では、24時間換気システムが優れているといわざるを得ません。 その他、天井の高さが高い居室では、換気回数の緩和を受けることができます。 ■ベイクアウトについて 揮発性有機化合物は高温になると揮発するので、家の引渡し前に数日間ほど、部屋を30°C以上にして、通気を良くすると、かなりの有機化合物の量を削減できるとする考え方です。この作業をベイクアウト(焼き出し)といいます。もちろん、その間は住むことはできません。ただし、この方法は家具を入れてからでないと意味がありません。家具で陰になる部分があると考えると、家具を入れる前と、家具を入れてからやる方法が良いともいえますが、現実的ではありません。家具は、引き出しやタンスのドアを全て開けてやることが必要です。 ただこの方法は、クロスなどの内装材を痛めることにもなります。また、表(※2)のように沸点の低いアスベストやアセトアルデヒドには効果があるようにも見えますが、接着剤などに含有しているため、即効性を期待できません。むしろ沸点は多少高いですが、トルエンやキシレンなどの溶剤には、効果があるでしょう。しかし、ベイクアウトをしたすぐ後は、室内濃度が下がるが、しばらくすると逆に濃度が高くなるとの報告もあります。濃度が高い場合は、効果があると思いますが、根本的な解決にはならないでしょう。 ■再び、シックハウスについて考える シックハウス法ともいわれる建築基準法の改正は、2005年7月でした。しかしこの法律は、防蟻材であるクロルピリホスの全面禁止と、ホルムアルデヒドの使用制限を定めたものにすぎません。要するに、建築基準法ではごく一部の部分しか制御しえないのです。厚生労働省の定める13物質にしても、それだけで良いのかという意見もありますし、定めた指針値にしても、曖昧なままです。また、シックハウス自体も明確な定義があるともいえません。現代が生んだ「病」と片付けるには、大きな問題をはらみ過ぎています。では、高気密住宅を止めれば良いではないかという極論に賛成するわけにもいきません。人は、それぞれの考え方で生活をすべきだと私は思います。 我が家は、1997年に建設しました。シックハウス法以前でしたが、24時間換気システムを導入しました。たまたま、私を含む家族がアレルギー性疾患にかかり易い体質だったせいもあります。私は、年2回は、24時間換気システムの熱交換ユニットのフィルターの清掃(場合により交換)を自分でやっています。その度に、フィルターの汚れに恐れおののきます。それほど目詰まりを起こしかけているからです。熱交換ユニットの交換素子は、年1回には夏の暑い盛りには必ず日光に当てるようにしていましたが、昨年は、交換素子の本体も、ネットで購入して自分で交換しました。 2007年の7月号の日経ホームビルダーでは、「シックハウス再点検」という特集が組まれました。その時驚いたのが、換気システムのフィルターをまったく清掃していないケースがあったことです。ハウスメーカーなり設計事務所がまったく説明をしていなかったのでしょうか。仮に説明をしなかったとしても、説明書等があったはずです。同特集には、換気システム自体を電気節約のため切っていたケースも多かったことが記述されていました。確かに、換気システムのメンテナンスをしようと思っても、脚立で天井点検口を開けるという作業は、誰でもができることではありません。しかしながら、メンテナンスをしなければ、機能が働かないという認識を共有したいものです。メンテナンスが少ない、自然換気に近い方法で、大臣認定を取得している方法もあります。 リフォームをした結果、シックハウスにかかったというケースもあります。このように、明確な結論がシックハウス対策にはないのが実情なのです。しかしながら、作る人も、住む人も、目に見えないものに対して、改善するという自努力をしなければ、解決していかない課題であるといえましょう。 |
1),9)は,建築基準法の規制対象物質 1)〜6)は,住宅性能表示で,濃度を測定できる6物質 厚生労働省の定める「化学物質の室内濃度指針値」(※1) |
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代表的な有機化合物の沸点 (※2) (国土交通省住宅局発行の改正建築基準法に基づくシックハウス対策より) |
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■揮発性有機化合物とは(厚生労働省の室内濃度指針がある物質) 1)ホルムアルデヒド:メタノール(メチルアルコール)を空気酸化することにより生成される、刺激臭を持つ無色の気体です。水溶液はホルマリンとして医薬用劇物とされています。フェノール樹脂、尿素樹脂などの原料として広く用いられ、接着剤、塗料、防腐剤となります。安価なため広く建材に利用されていますが、建材から空気中に放出されることにより、呼吸器系、目、のどなどへの炎症を引き起こします。シックハウス症候分の最大の原因物質です。沸点がマイナス21°Cと非常に低いことから、簡単に気化してしまいます。シックハウス対策による建築基準法の改正により、ホルムアルデヒドを含まない建材の採用が進んでいます。 2)アセトアルデヒド:エタノールを酸化して得られます。フルーツ様の臭気を有しますが、引火性が強く、消防法では危険物第4類の特殊引火物に指定されています。エタノールは、酒類の主成分のため、飲酒後の体内で生成される二日酔いの原因とされるアセトアルデヒドと同じものです。タバコの煙にもアセトアルデヒドは含まれています。合成樹脂や合成ゴムの原料として用いられています。沸点が20°Cですので、気化しやすいといえます。アセトアルデヒドを含まない建材の採用が進んでいます。 3)トルエン:原油中にも少量存在しますが、石油精製において原油を蒸留する課程で得ることができます。芳香性があり、水には余り溶けませんが、油類を良く溶かすため、塗料の溶剤として広く利用されています。常温で揮発性があり、引火性がありますので、消防法では危険物第4類に指定されています。また、毒性が強く、麻酔作用もあるため、毒物及び劇物取締法により劇物に指定されています。シンナーは、トルエンを主成分としています。 4)キシレン:トルエンとほぼ同様の性質をもっているため、劇物に指定されています。用途もトルエンと同様です。厚生労働省の室内濃度指針値では、トルエンの0.26mg/m3(0.07ppm)に対して、0.87mg/m3(0.20ppm)と約1/3の指針値になっています。<値が少ないほど、毒性が高い> 5)エチルベンゼン:石油精製において原油を蒸留する課程において生成されるキシレンの異性体です。したがって用途等は、キシレンと同様です。指針値は、3.8mg/m3(0.88ppm)と、トルエンの約1/15、キシレンの約1/4の指針値になっています。 6)スチレン:天然の樹脂の成分として発見されましたが、工業的にはエチルベンゼンを脱水素して得られます。熱や光で重合(化学反応の一種)してポリスチレンを作ることにより、発泡スチロールやプラスチックが作られます。発泡スチロールは、断熱材として広く用いられています。スチレン自体は、無色透明の液体で、消防法では危険物第4類に指定されています。 7)パラジクロロベンゼン:昇華により強い臭気を発する白色の固体です。防虫剤のパラゾールなどが有名ですね。消臭剤にも使われています。高濃度になると、人への害を及ぼすとされています。 8)テトラデカン:原油から得られる炭化水素の一種で、灯油などにも含まれている無色の液体です。水には溶けませんが、塗料などの溶剤に使われます。厚生労働省の室内濃度指針値では、0.33mg/m3(0.04ppm)とトルエンに近い指針値になっています。 9)クロルピリホス:常温では無色または白色の結晶で、水には溶けにくく常温での揮発性は低い有機リン化合物ですが、殺虫効果を持つことから、農薬使用の他、シロアリによる建物への被害を防止する目的で木材に塗布、浸透させられました。しかし、皮膚接触や経口摂取・吸入により、倦怠感、頭痛、めまい、吐き気、腹痛などを起こすことがあるため、建築基準法により、居室を含む建築物への使用を禁止されてました。また、国内では、既に製造中止となっています。 10)フェノブカルブ:無色で臭気のある結晶ですが、農薬や防蟻剤として用いられています。厚生労働省の室内濃度指針値では、クロルピリホスが0.001mg/m3(小児では0.0001mg/m3)ですが、フェノブカルブは、0.03mg/m3と1/33の指針値になっています。 11)ダイアジノン:有機リン系の殺虫剤です。強酸や塩基と反応すると、猛毒のチオピロリン酸テトラエチルを生成する場合があるといわれています。厚生労働省の室内濃度指針値では、0.00029mg/m3とクロルピリホスの約3倍の指針値になっています。アメリカでは農薬としての使用を段階的に禁止しているようですが、国内ではネットをみると、まだかなり販売されていますね。 12)フタル酸ジ−n−ブチル:無色(淡色)の粘性がある液体で、特徴的な臭気を有しいます。壁紙、床材、各種フィルム、電線被覆等の可塑剤(柔軟性を与えたり、加工しやすくするための添加剤)として、広く利用されています。フタル酸ジ−2−エチルヘキシルとの反復または長期間の接触により、皮膚炎を起こすことがあるそうです。 13)フタル酸ジ−2−エチルヘキシル:無色の粘性がある液体で、フタル酸ジ−n−ブチルと同様な用途に用いられます。かつて、各種の医療機器にも利用されていたため、非常に注目(悪い意味で)されている有機化合物です。 |
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JISのF☆☆☆☆認定マーク例 (右上にJISマーク)(※3) |
JASのF☆☆☆☆マーク例 (JASマークがある)(※4) |
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大臣認定のF☆☆☆☆マーク例 (JISマークがない)(※5) |
工業会の自主マーク例 (※6) |
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■ホルムアルデヒド発散建築材料とは 実際にホルムアルデヒドを発散する建築材料には、何があるでしょう。国土交通省の「ホルムアルデヒド発散建築材料の審査方法について/2003年6月26日/国土交通省建築指導課」によると、ホルムアルデヒドの発散建築材料のリストと審査方法が等級別に明示されています。参考に、そのリストを上げてみますが、非常に多岐に渡っていることが判ります。 1)合板 2)木質系フローリング 3)構造用パネル 4)集成材 5)単板積層材(LVL) 6)MDF 7)パーティクルボード 8)その他の木質建材:木材のひき板、単板又は小片その他これらに類するもの をメラミン樹脂系その他の接着剤により面的に接着し、板状に成形したもの 9)ユリア樹脂板 10)壁紙 11)接着剤 ・壁紙施工用でん粉系接着剤 ・ホルムアルデヒド水溶液を用いた建具用でん粉系接着剤 ・ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、 ホルムアルデヒド系樹脂を使用した接着剤 12)保温材 ・ロックウール保温板、ロックウールフェルト、ロックウール保温帯、 ロックウール保温筒 ・グラスウール保温板、グラスウール波形保温板、グラスウール保温帯、 グラスウール保温筒 ・フェノール樹脂系保温材 13)緩衝材 ・浮き床用グラスウール緩衝材 ・浮き床用ロックウール緩衝材 14)断熱材 ・ロックウール断熱材 ・グラスウール断熱材 ・吹き込み用グラスウール断熱材 ・ユリア樹脂又はメラミン樹脂を使用した断熱材 15)塗料 ・アルミニウムペイント ・油性調合ペイント ・合成樹脂調合ペイント ・フタル酸樹脂ワニス ・フタル酸樹脂エメナル ・油性系下地塗料 ・一般用さび止めペイント ・多彩模様塗料 ・家庭用屋内木床塗料 ・家庭用木部金属部塗料 ・建物用床塗料 16)仕上塗材(現場施工) ・内装合成樹脂エマルジョン系薄付け仕上塗材 ・内装合成樹脂エマルジョン系厚付け仕上塗材 ・軽量骨材仕上塗材 ・合成樹脂エマルジョン系複層仕上塗材 ・防水形合成樹脂エマルジョン系複層仕上塗材 17)接着剤 ・酢酸ビニル樹脂系溶剤形接着剤 ・ゴム系溶剤形接着剤 ・ビニル共重合樹脂系溶剤形接着剤 ・再生ゴム系溶剤形接着剤 |
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の区分と内装制限 (※7) |
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ホルムアルデヒド発散建築材料の使用面積の制限 (建築基準法)(※8) |
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(建築基準法) (※9) |
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支笏湖そばの「苔の洞門」にて 2010年7月15日撮影 |
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014 建設リサイクル法と建築物の解体等(改修)に伴う有害物質について(2011年3月25日) |
■建設リサイクル法と対象となる建設工事 2000年に制定された法律です。正式名称は、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」といいます。対象となる建設工事では、指定されたフロー(※3)による手順で解体・改修工事を実施することとされています。 対象となる建設工事とは、1)がある場合の解体・新築で、2)の基準以上の建設工事です 1)特定建設資材(※1)がある 2)対象となる規模の建設工事(※2) 対象建設工事においては、工事着手の7日前までに、発注者から都道府県知事に対して、分別解体等の計画等を届け出ることが義務付けられています。また、適正な解体工事を実施するために、解体工事業者の都道府県知事への登録制度も創設されています。また、罰則も定められました。 ■建設リサイクル法の目的 特定建設資材(※1)の分別解体とその再資源化が目的とされています。さらに再生資源の十分な利用と廃棄物の減量も目的となっています。同時に、解体工事業者の登録制度により、不法投棄等の悪徳業者の排除も図られています。また事前届出には、解体工事に要する費用を明示する必要があり、不当な安値発注を防止するようになっています。 平均的な解体工事の費用は、100万円/30坪といわれています。これは、一軒の木造住宅の解体が100万円強程度なのですが、500万円未満の建設工事を請け負う場合は、建設業の許可 (※4)が不要とされているため、許可を受けていない弱小業者が機械を借りて<ミンチ解体>を防ぐ意味も登録制度にはあります。 ■産業廃棄物について 建設工事に伴い、副次的に得られるすべての物品を「建設副産物」といいます。建設副産物は、そのまま再生資源として利用できるものと利用できないものに大きく分けられます。そのまま再生資源として利用できるものに「建設発生土」や「金属くず」があります。一方、再生資源としてそのまま利用できないものは、「廃棄物」と「原材料として利用の可能性があるもの」に分けることができます (※5)(「よくわかる建設リサイクル」/建設副産物リサイクル広報推進会議より)。 「廃棄物」は、家庭から発生する「一般廃棄物」とは別に、「産業廃棄物」として厳しく管理され、排出事業者に処理責任があります。その中で、人の健康または生活環境に被害を生ずる恐れがあるものを「特別管理廃棄物(※6)」とされ、さらにその中でもアスベストやPCB等は「特定有害産業廃棄物」とされて、各種の法律で規制がかけられています。また、建設工事に伴って発生した「産業廃棄物」とならない「事業系一般廃棄物」も排出業者に処理責任があります。 ■再資源化について 「原材料として利用可能なもの」のうち、建設リサイクル法に定められているものが、特定建設資材(※1)です。国土交通省のデータによると、2008年度の全国の建設廃棄物が約6,380万トンで、そのうち93.7%の再資源化率だそうです。 コンクリート塊は、破砕・選別・混合物除去などを行って、骨材等などに再生し、道路などの舗装の路盤材やコンクリート用骨材などに利用されています。コンクリートブロック、テラゾブロック、軽量コンクリートは特定建設資材のコンクリートに含まれます。PC版はコンクリート及び鉄からなる建設資材となります。2008年度のコンクリート塊の再生資源化率は、97.3%です。2012年度には98%以上を目標としています。 アスファルト・コンクリート塊は、破砕・選別・混合物を除去後、再生アスファルトや路盤材として再活用されています。2008年度のアスファルト・コンクリートの再生資源化率は、98.4%です。2012年度には98%以上を目標としています。 また、廃木材は、細かく砕いて板・製紙用チップあるいは固形燃料、セメント燃料化などに再び利用されます。廃木材には、木材はもちろん、集成材、合板、パーティクルボード、インシュレーションボードなどの繊維板も含まれます。2008年度の発生木材の再生資源化率は、80.3%です。2012年度には77%以上を目標としています。 目標数値が低いのは、目標設定をしたのが2005年度だったからでしょう。それと、リサイクル施設の整備拡充に対して、公共・民間工事等が縮減したため、予定より再資源化率が高くなったものと思われます。実際、建設汚泥等を含む建設廃棄物を再資源化した最終処分量の総量は、2005年度が約600万トンでしたが、2008年度には402万トンになっています。(※7 日本土木工業協会データ集から) それと、どうも達成率が高いのが気になります。本当にそれだけの達成率を果たしているのでしょうか。リサイクルの手続きを踏んだものは、実態に関わらず、すべてリサイクルに含める官製数値なのではないでしょうか。機会があれば、実態数値を調べてみたいと思います。 ■対象とならないもの 建設資材が対象ですから、伐採木、伐根材、梱包材、木製のコンクリート型枠などは対象になりません。また、モルタルやセメント瓦、普通れんが、タイル、ALC版、窯業系サイディング、スレート板、アスファルト・ルーフィングなどは建設リサイクル法の対象でありません。さらに、竹や木質系セメント板や樹脂混入の木質材は建設リサイクル法対象の木材にはなりません。対象となるものと対象にならないものの代表例が(※8)です。 ■事前調査の確認事項 フローにある事前調査で求められる事項は、以下の通りです。 1)対象建築物等の周辺の状況 2)分別解体等をするために必要な作業を行う場所 3)廃棄物その他のものの搬出経路 4)残存物品の有無 5)吹付けアスベストその他の対象建築物等に用いられた特定建設資材に付着したもの 6)その他 ■事前措置の内容 工事施工前に、要求される事前措置の内容は以下の通りです。 1)作業場所及び搬出経路の確保 2)残存物品の搬出の確認 3)付着物の除去 ■付着物を含む有害・危険物について アスベストを初め、表(※9)のようなものがあります。これらの有害物質は、各種の法律により取扱等が規制されています。 1)アスベスト関連:労働安全衛生法・大気汚染防止法・廃棄物処理法・建築基準法 (アスベスト)を参考にして下さい 2)PCB関連:PCB(ポリ塩化ビフェニル)廃棄物特別措置法 3)フロン:フロン回収破壊法・家電リサイクル法・地球温暖化対策法 4)特定家電:家電リサイクル法・廃棄物処理法 5)その他:廃棄物処理法 ■PCB ポリ塩化ビフェニルまたはポリクロロビフェニルは、置換塩素の位置によって209種の異性体があります。水にきわめて溶けにくく、沸点が高い物理特性を有し、電気絶縁性が高く、耐薬品性に優れていたため、変圧器やコンデンサなどの電気機器の絶縁油、加熱・冷却用の熱媒体、潤滑油、可塑剤、塗料、ノンカーボン紙の溶剤など、非常に幅広い分野に利用されました。1972年以前に施工された建築物のポリサルファイド系のシーリング材にもPCBを含有しているケースがあるようです。 |
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建設リサイクル法によるフロー図 (※3) (「建築物の解体等に伴う有害物質等の適切な取扱い」 /建設副産物リサイクル広報推進会議より) |
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建設副産物 (※5) (「よくわかる建設リサイクル」 /建設副産物リサイクル広報推進会議より) |
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(環境省のホームページより /詳細は環境省のホームページにリンクしています) |
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しかし、脂肪に溶けやすいという性質から、慢性的な摂取により体内に徐々に蓄積し、1964年に起こった「カネミ油症事件」などをきっかけとして、発がん性や皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常の原因となる毒性の高い物質として、日本では1972年に生産・使用禁止、1975年には製造および輸入が原則禁止されました。 国内では、民間主導によるPCB処理施設設置の動きがありましたが、施設の設置に住民の理解が得られなかったことなどから、30年の長期に渡ってほとんどの処理が行われず、結果として保管が続きました。そして、2001年のPCB廃棄物特別措置法の施行により、PCB廃棄物を保管する事業者は、保管状況の届出の他、2016年7月までの処理が義務付けられるようになりました。 政府全額出資会社であるPCB処理業者のJESCOのホームページをみるとPCBが使われている製品の図(※10)が判りやすく出ています。JESCOのホームページには、処理の費用も出ています。また、中小企業には処理料金の7割軽減制度などもあるようです。 アスベストについてでも書きましたが、GEの経営者を引退したジャック・ウェルチが無害と主張しているのは、このPCBです。 ■フロン フッ素と炭素の化合物であり、不燃性、化学的に安定であり、液化しやすく、人体に毒性がないということから、冷蔵庫やエアコンなどの冷媒用途を初め、断熱材等の発泡、半導体や精密部品の洗浄剤などさまざまな用途に活用されてきました。後述するハロン(ハロゲン)などを含めた化合物の総称です。 しかし、オゾン層の破壊、地球温暖化への影響などが周知されることとなり、その代替え物質への転換が図られています。また、比較的毒性が低いとされていますが、肝障害などを引き起こす毒性の高いものもあるようです。大別して、CFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)の3種類に分けられますが、代替えフロンといわれるものはHFCを指しています。 HFCは、オゾン層の破壊はしないものの二酸化炭素の1,000倍以上の大きな温室効果を及ぼすといわれています。京都議定書で、日本が約束をしたのは、HFC、二酸化炭素を含む6ガス合計排出量で6%の削減です。また日本においては、CFCは1995年に製造中止となり、HCFCは2020年に製造中止となることになっています。 解体等をしようとする建物にフロン類が充填されている場合は、発注者から解体を直接請け負った業者が、発注者に書面(事前確認書)で説明をしなければなりません。回収したフロン類は、第一種フロン類回収業者が自ら再利用するか、フロン類破壊業者へ引き渡して破壊を委託します。以上に違反した場合の罰則も定められています。 ■ハロン ハロンも広義にはフロンに含まれる化合物で、ハロゲンともいわれます。二酸化炭素より消火能力が優れているため、特に電気設備、電算機、博物館、電話交換機、競技車両、自衛隊・警察車両、溶剤類を扱う実験室などに消化剤として良く用いられました。かつては、ハロン1011もありましたがその毒性の強さから、ハロン2402、ハロン1211、ハロン1301が用いられるようになり、ハロン1301が主流を占めています。 1994年のハロン規制により、現在は製造されていませんが、国内には17,000トンが使用されているといわれています。ハロン1211、ハロン1301は高圧ガス保安法により容器の1/2をねずみ色に塗色するように義務付けられていますし、消火時の注意事項とともに「ハロン1301」などと銘板が必ず貼ってあります。(※11) ハロン1301の特徴は、人体への毒性がほとんどなく、独特の臭いがあり、二酸化炭素の毒性などを考えても、その消火剤としての安全性にありました。回収・運搬はハロンバンクに登録された業者に委託して、新設・補充用に再利用することになっています。 ■蛍光管 蛍光管内部にあるアルゴンガスなどには微量の水銀が封入されています。蛍光管を破損させると、その水銀が大気中に排出されることになります。そのため、蛍光管を破損しないように取り外して、運搬、処分をする必要があります。水銀は、「無機水銀」と「有機水銀」に分けられ、水俣病で有名になったメチル水銀は「有機水銀」です。 蛍光管に含まれる「無機水銀」は毒性が低いとされますが、マグロやブリの肝臓内で、「無機水銀」の<メチル化>が証明されています。土中のアセトアルデヒドやアセチレンと直接化合したり、紫外線によって光化学反応を起こすことで、「有機水銀」に変化することも判明しています。水俣病を引き起こしたチッソも、当初は「無機水銀」を使用していたと主張していました。 要するに無機でも有機でも問題ありなのです。水銀は液体の状態では体内に吸収されにくいのですが、蛍光管を割ると、中に含まれる水銀が空気中に飛散・気化されるので、肺から吸収されやすいことになります。 「ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くず」「金属くず」の運搬許可業者が運搬し、「ガラス・金属くず」の処分業許可を有する中間処理施設か「蛍光管」専門の中間処理施設での処分が求められます。処理施設では、水銀を放出しないように破砕処理をして、ガラスくずはグラスウール等への再生、金属部はアルミ他の金属原材料に、水銀はそのまま再利用されます。 ■臭化リチウム あまり聞き慣れない化合物ですが、吸収式冷凍機の冷媒として使用されています。フロン規制への対応のためにも導入されました。臭化リチウムは腐食性が強いため、クロム酸などが防食剤として添加されていました。そのため、猛毒である六価クロムを含有している臭化リチウムが存在しているのです。「廃アルカリ・特定有害産業廃棄物(六価クロム)」の処分業許可を有する処分施設にて処分する必要があります。 ■鉛蓄電池・ニッカド電池 鉛蓄電池(小形シールタイプを含む)、ニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、アルカリ蓄電池、乾電池などは、資源有効利用促進法により、メーカーの回収・リサイクルが義務付けられています。そのため、産業廃棄物となったこれらの電池類は製造元の蓄電池メーカーが処理することになっています。メーカーが不明の場合は機器製造メーカーに、小形二次電池はJBRC(産業廃棄物広域認定資格)に問い合わせることになっています。 ■CCA処理木材(クロム、銅、ヒ素化合物系防腐剤) これもあまり知られていませんが、防腐・防蟻目的で、1960年代後半から1990年代まで、電柱や住宅の土台から上1mの範囲の木材、木製デッキ、木質パネル工法の枠材にCCAが注入されたことがあります。その後は、クレオソート油などが利用されているため、現在は使われていません。 注入時は薄緑色の外観ですが、汚れや色あせで材面が変色したり、CCAを注入した木材に、他の防腐剤を二重処理したケースもあり、一目ではわからないことが多いようです。JAS表示で「C−1」とか「C−3」と刻印をしたCCA処理木材もあるようです。他の木材と分離・分別して、廃棄物処理法に基づき焼却か埋め立てが義務付けられています。 ■ヒ素・カドミウム含有石膏ボード 1973年〜1997年4月製造の小名浜吉野石膏ボードいわき工場で製作されていた石膏ボードには、ヒ素が含有されていました。ボードの裏面表示のロット番号は、吉野石膏OY ロット番号03 73 241050Cとなっています。主に東北地方を中心に東日本で使用されていたそうです。 1992年〜1997年製造の日東石膏ボード八戸工場で製作されていた石膏ボードには、カドミウムが含有されていました。いずれも、分別解体をして、メーカー引き取りか管理型最終処分場に埋立処分をすることになっています。 ■ダイオキシン類 あまりにも有名になったダイオキシンですね。一般の建物では考える必要がないといえます。ほとんど「廃棄物焼却炉の解体」だけの問題です。ビニルシート等による隔離養生をして保護愚着用での汚染処理が求められます。3ng−TEQ/g超の汚染付着物は、特別管理産業廃棄物となりますが、それ以下の数値の燃えがら、ばい煙、汚泥等は産業廃棄物として処分されます。どうも猛毒として宣伝されすぎたかも知れません。人類への無害説もありますが、まあ積極的に摂取する必要もありませんね。 ■その他 解体に伴って発生するものには、他にも残存物品といわれる什器・備品等があります。エアコン、テレビ、冷蔵庫、パソコンなどは、家電リサイクル法の特定家庭用機器に指定されています。また一般廃棄物として着手前に撤去をすべきものも多数あります。 |
建設汚泥を含む建設廃棄物の再資源化率 (※7) (日本土木工業協会データ集から) |
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特定建設資材と特定建設資材とならないものの代表例 (※8) |
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(「建築物の解体等に伴う有害物質等の適切な取扱い」 /建設副産物リサイクル広報推進会議より) |
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PCB製品の代表例 (※10) (JESCOのホームページより) |
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ハロンと銘板の写真 (※11) (「建築物の解体等に伴う有害物質等の適切な取扱い」 /建設副産物リサイクル広報推進会議より) |
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013 アスベストについて(2011年3月23日) |
■アスベストとは 日本語では、「石綿」です。蛇紋石(クリソタイル)や角閃石(クロシドライト、アモサイトなど)が繊維状に変形した天然の鉱石のことです。単位は、空気中の<f/L(本数/リットル)>で表されます。国土交通省の「建築物のアスベスト対策」には「(社)日本石綿協会」提供の各種アスベストの写真が掲載されています。(※2) ・クリソタイル(温石綿、白石綿):日本では、2004年10月に 使用禁止 ・クロシドライト(青石綿):1995年から製造・使用禁止 ・アモサイト(茶石綿):1995年から製造・使用禁止 ・その他、アンソフィライト(直悶石綿)、トレモライト(透角悶石綿)、 アクチノライト(緑悶石綿)などがあります。 ■「アスベスト(石綿)」と似ている「岩綿(ロックウール)」とは ロックウール(岩綿)は耐熱性に優れた玄武岩、高炉スラグなどを主原料として、石灰などを混合し、高温溶解して生成した人造鉱物繊維です (※3)。主成分は酸化ケイ素と酸化カルシウム。また、ロックウールは非結晶質であるのに対し、アスベストは結晶質です。単繊維径は3〜10μm程度で、アスベストの単線維に比べて数十〜数百倍太いものです。石綿(アスベスト)と外観が似ているため、混同されがちですが、別物です。 しかし、1988年以前には、アスベスト製品のラインを流用したプラントで製造された製品が多いため、アスベストが混入しているケースがあるようです。また、耐火被覆材としての吹き付けロックウールには、過去にはアスベストが混ぜられていたことがあります。無アスベスト吹付けロックウールに比べて、アスベスト入りの吹付けロックウールは、<毛羽立ち>があるとの情報もありますが、正しい分析が必要でしょう。 EUなどでは、発がん性物質として扱っていますが、国際がん研究機関(IARC)では「発ガン性を分類できない(innocent:グループ3)」としています。要するに、不明確なのです。 ■アスベスト(石綿)を含む製品(建材)/レベル1 (1)吹付けアスベスト アスベストにセメント等の結合材と水を加え混合し、吹付け機を用いて吹付けたもので、1962年頃〜1975年に、壁・天井・梁・柱などに防火・耐火・吸音・断熱の目的で使用されました。アスベストの含有率が約55%〜70%程度の製品が多いです。商品には、ブロベスト、オパベスト、サーモテックスA、トムレックス、リンベット、コーベックスAなどがあります。1975年には製造が終了しています。 |
アスベストの原石 厚生労働省のパンフレット 「アスベスト全面禁止」より (※1) |
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アスベスト各種 国土交通省の「建築物のアスベスト対策」より <(社)日本石綿協会提供> (※2) |
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ロックウール 「日本ロックウール工業会」より (※3) |
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(2)吹付けロックウール(乾式また半乾式) あらかじめ工場でロックウールとセメントを配合した材料を、吹付け施工機械で圧送し、ノズル先端の周囲から噴霧される清水で包み込み、材料を湿潤させながら均一に下地面に吹付ける乾式工法と清水とセメントをあらかじめ攪拌装置のあるスラリー槽で混合してセメントスラリーを作り、ロックウールと別々に圧送し、ノズル先端部で噴霧化されたセメントスラリーとロックウールを混合しながら均一に下地面に吹付ける半乾式工法があります。吹付けアスベストと同様の目的で使用されましたが、アスベストが混入されていました。アスベストの含有率は、約3%〜35%程度です。商品には、スプレーテックス、スプレエース、サーモテックス、ブロベストR、浅野ダイアロック、コーベックスR、オパベストR、タイカレックスなどがあります。1980年には無アスベスト化されました。 (3)吹付けロックウール(湿式) あらかじめ工場でロックウールとセメント及び他の材料を配合して製造した吹付け材料に、水を加えて混練し、専用の吹付け機でノズルの先端に圧送して吹付ける工法です。アスベストの含有率は、約1%〜5%程度です。商品には、トムウェット、ATM−120、プロベストウェット、スプレーコートウェット、サンウェットなどがあります。1990年には無アスベスト化されました。 (4)吹付けバーミキュライト(ひる石吹付け) 無アスベスト化される以前のバーミキュライトには、アスベストが含有していました。内装の天井仕上げなどに使用されていました。含有率は、数%〜40%程度です。商品は、バーミライト、ミクライト、ウォールコートMなどです。1987年には無アスベスト化されました。 (5)パーライト吹付け 無アスベスト化される以前には、数%の含有率がありました。内装の壁・天井仕上げなどに使用されていました。アロック、ダンコートFなどの商品があります。アロックは、1987年には無アスベスト化、ダンコートFは、1989年に製造が終了しています。 (6)塗り壁材等 内装の仕上げに使用されていました。2%のアスベスト含有率のひる石プラスターがあります。現在は、使用されていません。製造終了等は不明です。 ■アスベスト(石綿)を含む製品(建材)/レベル2 (7)石綿保温材 工業・化学施設、ボイラー、空調設備などで高温下の熱絶縁に使われたものですが、スポンジボードやカポサイトの商品があります。特に、カポサイトはアスベストの含有量が80%〜100%という含有量でした。1979年には製造が終了しています。 (8)けい酸カルシウム保温材 工業・化学施設、ボイラー、空調設備などで高温下の熱絶縁に使われたものです。アスベスト含有率は約1〜25%ですが、1980年にはおおむね無アスベスト化しました。無アスベストのけい酸カルシウム保温材は今でも使われています。商品には、シリカボード、シリカカバー、ダイヤライト、ダイヤライトL、シリカライト、スーパーテンプボード、ダイパライト、インヒビライト、エックスライトボード、ペストライトカバー、ベストライトボードなどがあります。 (9)珪藻土保温材 これも熱絶縁材です。珪藻土保温材1号というアスベスト含有率が1%〜10%の商品がありましたが、1974年には製造が終了しています。 (10)パーライト保温材 これも熱絶縁材です。アスベスト含有率が約1%の三井パーライト保温材という商品がありましたが、1975年に無アスベスト化され、2000年には製造が終了しています。 (11)耐火被覆板 アスベストとセメント等を混合して工場で成形したものです。耐火被覆材として、鉄骨の柱や梁に張り付けて使われました。アスベスト含有率は、約25%〜70%まであります。トムボード、プロベストボード、リフライト、サーモボード、コーベックスマットなどの商品がありました。1983年までには、製造が終了しています。 (12)けい酸カルシウム板第二種 耐火被覆板と同様に利用されました。アスベスト含有率は数%〜10%程度です。キャスライトH、キャスライトL、ケイカライト、ケイカライトL、ダイアスライト(E)、カルシライト(1号/2号)、ソニックライト(一号/二号)、ダイカライト(1号/2号)、タイカライトコラム、サーモボードL、ヒシライト、リフボード、ミュージライトなどの商品があります。製造終了、もしくは無アスベスト化は、1997年まで掛かっています。これも良く現場で接した材料です。 (13)屋根用折版石綿断熱材 屋根に利用されている折版の裏側に、断熱・結露を目的として貼られた材料です。アスベスト含有量は90%です。フェルトン、ブルーフェルトの商品があり、1982年には製造が終了しています。 (14)煙突用石綿断熱材 煙突の内側に貼られた熱絶縁材です。カポスタック、ハイスタックなどの商品がありました。アスベスト含有量は、カポスタックが70%〜90%あり、1987年には製造が終了しています。ハイスタックは4%〜8%程度ですが、1992年に無アスベスト化され、現在も使用されています。私も、現場等で直接、接した記憶があります。 ■アスベスト(石綿)を含む製品(成形板)/レベル3 (15)石綿含有ロックウール吸音天井板 内装の仕上げ材で、天井に貼られました。ソーラートン、ミネラートン、ダイロートン、オトテン、ロッキーなどの商品があり、アスベストの含有率は数%です。無アスベスト化は、1987年に終わっています。これも良く利用されました。 (16)石綿含有目地材 耐火目地材ですが、機械類の保温にも使われました。リトフレックスなどの商品があり、アスベスト含有量は70%〜90%ありました。2001年に製造が終了しています。 (17)住宅屋根用化粧スレート セメント、けい酸質原料、繊維質原料、混和材などを主原料として加圧成形した商品で、コロニアル、フルベストなどの商品があります。アスベストの含有量は、約10%〜15%のものが多く、すべての商品が製造終了するのに、2004年までかかりました。 (18)スレート波板・スレートボード セメントに補強繊維としてアスベストを混ぜて板状に成型した製品です。屋根や外壁材として、大量に使用されました。アスベスト含有量は、5%〜15%のものが多く、「フレキ」などと呼ばれ、多くの商品があります。製造が終了したのは、2004年です。 (19)パーライト板 セメントにパーライトとアスベスト他を混和して成型した板材です。パーライトボード、マイティボードなどの商品があり、2004年に製造が終了したました。 (20)けい酸カルシウム板第一種 けい酸カルシウム板第二種と違って第一種は、飛散しにくい「成形板」に分類されています。石灰質原料、けいそう土などのけい酸質原料とアスベストが主原料で、スレート板に比べて軽いのが特徴です。主に防火が必要な内装外装の下地材として使用されました。アスベスト含有率は5%〜20%程度です。通称「ケイカル」と呼ばれた製品です。ハイラック、アスベストンなど多数の商品があり、製造終了したのは、1992年です。 (21)スラグ石膏板 高炉スラグと排煙脱硫石膏等を主原料として、アスベストやガラス繊維が混和された成形板です。内外装の下地材として使用されました。エスジーボード、SKボード、サンワカルサイトなど多数の商品がありました。製造終了したのは、2004年です。 (22)石膏ボード P.B./プラスターボードとも呼ばれ、室内の壁・天井は殆どがこの材料です。アスベスト含有量は、1%程度とされていますが、現在は、無アスベスト化されています。商品名は多数ありますが、ジプトン、ターガートーンなども含まれます。 (23)窯業系サイディング セメントにけい酸質原料、繊維質原料や混和材を入れて板状に成形された製品で、住宅の外壁等に多く利用されました。アスベスト含有量は約4%〜22%程度です。多数の商品があり、アスベスト含有の商品は、2002年に製造終了しています。 (24)押出成形セメント板 鉄骨造建築物の外壁や間仕切り壁に使用されました。アスロック、メースなどの商品があります。アスベスト含有の商品は、2004年に製造が終了しています。 (25)パルプセメント板 セメントに古紙を処理したパルプに無機質繊維材、パーライト、混和材をいれて板状に成形した商品です。屋内の内壁や天井に使用されています。NKボード、サンワボードなどの商品があり、アスベスト含有の商品は、2004年に製造が終了しています (26)スレート・木毛セメント積層板 木毛セメント板(アスベスト含有なし)にフレキ等を両面又は片面に貼った商品です。1995年に製造が終了しています (27)ビニル床タイル(Pタイル) ビニル樹脂に炭酸カルシウムなどの充填材や着色剤などを配合して成形した製品で、床材として大量に使用されています。柔軟性があるホモジニアスタイルにはアスベストが含有されていませんでしが、固いコンポジションタイルにはアスベストが含有されていました。アスベスト含有タイプは、1987年に製造が終了しています (28)ビニル床シート・クッションフロア・ソフト巾木 同じく、コンポジションタイプにはアスベストが含有されていました。このタイプの商品の製造が終了したのは、1990年です。 (29)石綿セメント円筒 煙突の他、地下埋設ケーブル保護管や排水管などに使われました。製造が終了したのは、2004年です。 (30)その他ボード・パネル類 その他、多数の商品があります。アスベスト含有のすべての製品が製造が終了したのは、2004年です。要するに、つい数年前まで使われていたことになります。 ■日本における規制の歴史 1955(昭和30)年 アスベストが建物の耐火被覆材として使用 され始まる 1960(昭和35)年 じん肺健康診断の義務付け 1971(昭和46)年 製造工場等における局所換気装置の設置等の 予防対策 1975(昭和50)年 アスベストの吹付け作業の原則禁止(条件付 きで建設現場での吹付け作業は認められてい た)、石綿重量比5%超を規制 1989(平成 元)年 アスベスト製品の製造工場に対する大気汚染 防止法規制 1995(平成 7)年 アモサイト(茶石綿)、クロシドライト (青石綿)の製造・使用等禁止 1996(平成 8)年 建築物の解体作業等に対する大気汚染防止法 規制 1997(平成 9)年 吹付けアスベストを使用する建築物の解体 作業基準と事前届出義務付 2002(平成14)年 建築物解体時の事前届出義務付け (建設リサイクル法) 2003(平成15)年 代替が困難なものを除くアスベスト含有製品 (建材・摩擦材等)の製造・輸入・譲渡・提供 ・使用の禁止 2004年(平成16)年 石綿重量比1%以上含む製品の製造原則 禁止 2005(平成17)年 石綿障害予防規制 2005(平成17)年 大気汚染防止法規制強化 2006(平成18)年 大気汚染防止法・建築基準法等の改正、石綿 重量比0.1%以上含む製品の製造原則禁止 EUにおける規制をみると、青石綿が使用原則禁止にされたのが1983年、すべてのアスベストの使用が禁止されたのが2005年です。日本における青石綿の製造等が禁止されたのが1995年ですから、12年ほど遅れた規制といえます。日本では、2003年以降、ほとんどのアスベスト製品が製造・使用等禁止されています。しかし、無アスベストとなる石綿重量比の規制をみると、1975年に5%以下、2004年1%以下、2006年にやっと世界基準といわれる0.1%以下の規制になっています。 すなわち、無アスベストといっても、5%未満の時代があったことが判ります。それが2004年まで続いていたわけです。また、アスベストの機能性・経済性から、その生産・消費は増加傾向にあるとのことです。特に、主要産出国であるカナダはクリソタイル無害説を唱えているそうです。企業の要求が強いアメリカのアスベスト対策は、EUに比して遅い対策でしたが、裁判も多いアメリカです。裁判により、多くのアスベスト製品製造企業が倒産したそうです。 |
同様の製品でも、無アスベスト化がはかられた製品もあります |
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鉄骨耐火被覆/吹付けアスベスト |
天井断熱材/吹付けアスベスト |
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天井断熱・吸音/吹付ロックウール |
鉄骨耐火被覆/吹付ロックウール |
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天井の吹付バーミキュライト |
ボイラーの保温材 |
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配管エルボの保温材 アスベスト含有保温材 |
鉄骨耐火被覆/ アスベスト含有けい酸カルシウム板 |
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屋根用折版断熱材 |
煙突用アスベスト断熱材 |
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壁・天井のスレートボード |
天井のけい酸カルシウム板 |
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天井の岩綿吸音板 |
天井の石膏ボード(ジプトン) |
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アスベストで表面処理をした壁紙 |
けい酸カルシウム板の耐火間仕切 |
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床のPタイル |
タイルカーペットの下にPタイル |
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床の長尺ビニルシート |
外壁の窯業系サイディング |
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外壁の押出成形板 |
軒天のけい酸カルシウム板 |
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外壁のスレートボード |
ベランダ仕切りのスレートボード |
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屋根・外壁のスレート波板 |
屋根の化粧用スレート |
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石綿セメント円筒 |
石綿セメント菅 |
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吹付けアスベスト等の概ねの使用期間 (※4) |
アスベスト使用が予想される建物・構造・部位など (※5) |
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■代替えが効かないため、製造等禁止が当分の間、猶予されている製品 (1)ジョイントシートガスケット 化学工場の設備の接合部分や潜水艦などに使用されるものが猶予されています(条件付) (2)渦巻き型ガスケット 同じく、化学工場の設備の接合部分に使用されます(条件付) (3)メタルジャケット形ガスケット 鉄鋼製造工場の1000°C以上の高炉送風用部分に使用されます(条件付) (4)グランドパッキン 化学工場や鉄鋼製造工場の設備と潜水艦に使用されます(条件付) (5)ミサイルに使用される断熱材 要するに、かなり特殊な部分以外は、2003年以降、製造も使用も禁止されました。2003年以降、製造・使用されている製品は、すべて無アスベスト化されていることになります。ただし、無アスベストといっても、前述したように、規制値が変遷しています。 ■吹付けアスベスト等の使用時期 アスベストを含んだ吹付け材が使用された期間は、概ね表(※4)の通りです。この表からも1975以前の鉄骨造の建物が要注意なことが判ります。現実には、そのような建物が多数あります。 また、1975年から1989年までに、アスベスト重量比5%未満の吹付けロックウールが使用されていたことも判ります。さらに、1989年から2004年にかけて、アスベスト重量比1%〜5%未満の製品が吹き付けられていたことも推測できます。現在は、アスベスト重量比0.1%以上は使用禁止です。 国土交通省の調査では、1956年〜1989年の全国の民間建築物(1,000u以上)の建物総数は、253,904棟、そのうち所有者からの報告がある建物は、155,806棟とのことです(2005年10月25日現在) ■吹付けアスベストが使用されている可能性の高い建築物 日本におけるアスベストの規制は、段階的になされてきました。ほぼ全面的に近い規制になったのは、2006年のことです。ILOの「アスベストの使用における安全に関する条約(第162号、1986年)」を日本で批准したのは、2005年のことです。20年近くも遅れている事になります。 至るところでアスベストが利用されてきました。含有する成形板まで考えると、日本にある建物の殆どを処理しなければならないことになります。現実論で考えると、含有量の高い吹付けアスベスト等が露出しているのが最も危険な建物ということになります。空気中に漂っている可能性があるからです。そのような建物の用途・構造・部屋・部位を表したのが、表(※5)です。 また、劣化現象の状態は、表(※6)を参考にして下さい。日本建築センター「既存建築部の吹付けアスベスト粉じん飛散防止処理技術指針・同解説」から引用しています。 ■アスベストの対策義務 既存建築物の増改築や大規模の修繕・模様替え等をする場合、建築基準法によって、吹付けアスベスト等の除去が義務付けられています。また、既存建築物の除却(解体)の場合、大気汚染防止法・建設リサイクル法・廃棄物処理法・労働安全衛生法に基づく、適切な分別解体・処分が義務付けられています。 逆にいえば、そのまま維持保全に努めれば、何らの対策義務も無いことになります。もちろん対策をすることを否定するものではありません。従って、吹付けアスベスト等の存在可能性が高い建物の所有者は、専門家等に調査を依頼し、剥離等の劣化があれば、対策工事をするべきです。専門家は調査の専門機関もありますが、知識のある建築士等でも可能です。ただし、アスベスト等の分析は専門機関でなければできません。 ■石綿障害予防規則に基づく対策の概要 アスベスト製品のレベル別の対処方法と実施概要は、表(※7)の通りです。各レベルに応じて、除去(完全に取り除く工法)、封じ込め工法(表層部を固着・固定)、囲い込み工法(板状の材料等で密閉する)の手法 (※8)が定められています。また、除去したアスベスト等の廃棄物処理フローは、表(※9)の通りです。 特別管理廃棄物とは、廃棄物処理法に定められた廃棄物で、通常の廃棄物よりも厳しい規制がかけられたものです。アスベスト等は、その中でも「特定有害産業廃棄物」と規定されています。特定監理廃棄物の処理には、「特別管理産業廃棄物管理責任者」を選任する必要があります。また、その処理事業者は、毎年「処理計画」「報告」を都道府県知事に提出する義務があります。さらに、「収集運搬」や「中間処理」の業者も許可制となっています。 ■アスベスト処理の費用 BCS/(社)建築業協会の調査によると、2007年1月から12月の1年間における施工実績から、吹付けアスベスト処理費用(1uあたり単価)の目安として、仮設・除去・廃棄物処理費等すべての費用を含んで、 (1)アスベスト処理面積300u以下の場合 2万円〜8.5万円/u (2)アスベスト処理面積300〜1,000uの場合 1.5万円〜4.5万円/u (3)アスベスト処理面積1,000u以上の場合 1万円〜3万円/u 施工条件によっては、大幅に変わる場合もあるとのことです。 ■再び、アスベストとは 処理をしたアスベストは、表(※9)のように、安定型か管理型の最終処分場に埋め立てられます。安定型最終処分場とは、環境に影響を与えないとされる廃棄物だけを埋め立てる処分場です。浸透遮水工や侵出水処理施設はありません。一方、管理型最終処分場とは、ゴムシートなどの遮水工や侵出水処理施設を設置して、水質試験やモニタリングで管理される処分場です。いずれも、埋め立てられることには変わりありません。それだけ厳重に処分する必要があるのです。元々、自然にあったものですが、加工したことにより変異したものといえます。永遠に長い年月を経て、自然に帰ることを期待していることになります。 しかしながら、大多数の処理をしていないアスベストは、人々が暮らす町の中に顕在しています。しかも発展途上国では、さらに増加しているのです。カナダは、自国の輸出品であるクリソタイル(白石綿)の有害性を否定して、ロシアと並ぶ最大輸出国となっています。日本でも未だに輸入されていることが不思議ですね。ちなみに、少し古いデータですが、日本貿易統計によると、2005年は、カナダから13t、ブラジルから20t、ジンバブエから77tの合計110tが輸入されています。 絶縁材で知られるPCBも発がん物質として問題となりましたが、GEの経営者を引退したジャック・ウェルチは、「ジャック・ウェルチ わが経営/日本経済新聞社/2001・10・22初版」で、「PCBはガンの原因にはならないと確信させるものだった。」と述べています。GEの社員は、数年間、ひじまでPCBにつかって仕事をしていたそうです。しかし、「PCBの使用から三〇年間、社員の間にガンによる死亡などの深刻な影響はみられなかった。」とも述べています。「カネミ油症事件」でも明らかなように、PCBは発がん性があり、皮膚障害や内臓障害、ホルモン異常をおこす毒性の強いものです。彼は、最盛時の年収が9,400万ドル(約80億円)も取っていたといいます。許せないですね。 また、アスベストの処理にまつわる話題でも、ずさんな管理・運営により管理型最終処分場での侵出水処理が不完全だったり、あるいは不法投棄などの問題も発生しています。さらに、アスベストを製品として販売・施工していた企業が、その除去も施工するのですが、その有害性を報じられると、その除去に高額な費用を要求したりしています。憤りを感じますね。 このようにアスベストは、現代文明が生んだ様々な矛盾に満ちた問題をはらんでいるともいえます。それは、日本で今、一番問題となりそうな原子力発電に対する考え方にもつながるものといえます。文明化されることによって発生する矛盾を、改めて考えてみたいと思います。 |
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吹付けアスベストの劣化状態 (※6) |
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アスベスト処理の概要 国土交通省「目でみるアスベスト建材」より (※7) |
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京都府のホームページを参考にさせてもらいました (※8) |
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アスベストの処理フロー 国土交通省「目でみるアスベスト建材」より (※9) |
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012 釘について(2011年3月15日) |
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釘の頭部の形状と記号/JIS (※2) |
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■釘の種類と記号 釘は、JIS(日本工業規格)のA5508:1992で表(※1)のような種類と記号が規格されています。また、同じJISにおいて、頭部の形状(※2)と胴部の形状(※3)が区分されています。寺社建築等に使用される、飛鳥時代から存在する「和釘」、またステップルなども広い意味での釘ですが、今回はJIS A5508の釘を対象とします。 釘製品の呼び方は、以下の様に示されます。 N F SM 3.4 75 (例) N:種類(※1)この場合「鉄丸釘」を表す F:頭部の形状(※2)この場合「平頭フラット」を表す S、GN、GNS、PN、PNS以外は省略できます SM:胴部の形状(※3)この場合「スムース」を表す SMの場合、SN及びPNのK頭の場合は省略できます 3.4:胴部の径 この場合「3.4mm」を表す PN釘以外は、省略できます 75:釘の長さ この場合「75mm」を表す そのため、(例)の場合、「N75」とだけ表示されることが多いのです。 ■N:鉄丸釘とNZ:めっき鉄丸釘 もっとも一般的な釘に「N:鉄丸釘」と「NZ:めっき鉄丸釘」があります。種類と主な用途は表(※4)(※5)です。また、N90、NZ90の釘の頭部径は、2012年3月31日までは、参考値となっています。 これは、釘打機に用いるコイル状のN90釘、NZ90釘が、改正された JIS規格の頭部径では、大きすぎて従来型の釘打機では使えなくなったためです。市場には2種類のN90釘、NZ90釘が流通していることになります。旧規格のN90釘、NZ90釘を区別して「N90:2005」、「NZ90:2005」と呼びます。要するに、業界からの要望で、2012年の3月までは、使用できるとした暫定措置なのです。同時に、PN釘に規格されていたT頭釘、カップ頭釘は削除されました。ちなみに、めっき釘のサイズは、めっき前のサイズを基準としています。 また、梱包用として作られているFN50とかFN65といった胴部が細く構造体には強度不足となる釘があります。特に東北・関東地方では、建築現場にかなりの頻度で使用されていたという情報があります(「釘」が危ない!/保坂貴司著/エクスナレッジ/P.23)。このFN釘が誤使用防止のために、JIS規格から削除されました。注意を要しなければなりません。 ■デジN釘 釘は、打ち込んだ後では、確認ができない釘が殆どです。そのため、品質等を確認するために頭部に釘長を刻印したカラー釘(N45は素地)が発売されています。規格表は、(※6)のようになっています。メーカーによっては、小さいサイズのデジN釘もでているようです。 ■CN:太め丸釘とCNZ:めっき太め鉄丸釘 ツーバイフォー工法に使用される釘です(※7)(※8)。これも、長さは同じで胴部が太いZN40との誤使用を防止するために、CN40などが今回の改正で削除されています。ツーバイフォー工法での使用が規定されていなかったCN40、CN32、CN25があったこと自体、危ないですね。また、呼び数値の長さと実際の長さが一致しないことに留意する必要があります。他に、現在ではほとんど用いられないツーバイフォー工法用の細めのBN釘がありますが、構造体には使用しません。また、よく話題がでるのですが、ロール状の自動釘打機用のNC釘も規格外です。これも構造体には使用できません。ネット上では、よく売買されていますので、注意しなければなりません。ツーバイフォー工法に利用される規格は、色が付いているのが特徴です。 ■ZN:溶融亜鉛めっき太め鉄丸釘 Zマーク補強金物を取り付けるために使用される「N釘」より太い溶融亜鉛めっきをされている釘です。種類は、(※9)です。JISが2009年7月に改正されましたが、ツーバイフォー工法に使用される「CN釘」と従来木造住宅の接合金物に使用される「ZN釘」が明確化されました。ただし、各メーカーから出ているZマーク補強金物には、専用の取付ビスがあります。専用ビスを使うべきでしょう。施工マニュアルなどで確認する必要があります。 ■PN:PN釘 旧規格名は「自動くぎ打機用くぎ」といわれていましたが、近年、手打用の釘も利用できる釘打機が普及していることにより、混乱を避けるために、専用釘として整理されました。PNF釘、PNH釘、PNM釘、PNK釘などがあります。一部例外はありますが、総じて胴部が細いため、構造体には使えません。 ■その他 その他の釘も、JIS A5508において規格されています。JISC日本工業標準調査会のホームページ(http://www.jisc.go.jp/)で閲覧可能です。参考にして下さい。 ■釘の強度とビスについて 釘のせん断力と引き抜き力は、表(※10)の数値です。データを見つけることができませんでしたので、<「釘」が危ない!/保坂貴司著/エクスナレッジ>から一部を参考とさせてもらいました。 ツーバイフォー工法に利用されるCN釘には、色が付いていますが、誤使用を防ぐためには有効な方法だと思います。他の用途でも、敢えて CN釘を使うという設計事務所もあるほどです。業界への不信をなくすためにも、デジN釘を普及させるなど、後確認ができる指導が必要です。 また、構造用合板の固定にはビスを使うという考え方もあります。引抜耐力は、明らかに向上します。建築基準法等の整備を急ぐ必要があると思います。 ■釘のめり込み過ぎ 釘は、打ち込んだ板材と釘頭が平らになることが基本です。しかし、釘打機の空気圧を強めにし過ぎると、めり込み過ぎが発生することが多々あります。2006年3月に安田工業(日本における西洋製釘の老舗)と匠建設の保坂貴司氏が東京都小平市の職業能力開発総合大学校で行った、釘のめり込み過ぎ実験のデータを安田工業のホームページから得ることができました(※11)。なおLL釘とは、安田工業が販売している自動釘打機用の、国土交通省から認定を受けているロール釘の商品名です。 この実験は、土台を桧、柱を杉、桁材に米松を利用して、針葉樹構造用合板2級3プライの9mm、12mmでめり込み量を0mm、2.5mm、5.0mmで比較した結果です。9mmの構造用合板では、めり込み量が2.5mmだと8%の壁倍率低下、5.0mmだと35%もの壁倍率低下を示しています。12mmの合板を利用しても、余り壁倍率が変わらないのは意外ですね。また、めり込み過ぎとなった時に、釘を間に打って間隔を75mmとした場合、めり込み量が2.5mmでは、めり込み無しの150mm間隔と比べて50%の壁倍率増加を示しますが、めり込み量が5.0mmだと、40%の壁倍率ダウンとなるのは、注目ですね。5.0mmのめり込みは、構造用合板そのものへ欠損を発生させていることになります。5.0mmのめり込みが発生した場合は、手打ち等により補強をすべきことになります。 LL釘は、釘頭を大きくしたスクリュー釘ですが、良い数値を示しているようです。このように、JIS規格外でも認定品を使うという方法もあります。もちろん、認定書等の確認は必要なことです。 ■釘の耐用年数 以前、大改修された唐招提寺の記録映像をテレビでみましたが、「和釘」の耐用年数は、1200年を経ても形が残っていました。これは、炭素量の多さが原因しているといわれています。法隆寺を初めとする宮大工の西岡常一棟梁(故人)は、法隆寺の古釘を使って「やりがんな」を作ってもらったところ、これが良く切れたと口述しています(木に学べ/法隆寺・薬師寺の美/西岡常一/小学館)。いかに和釘が優れていたかでしょう。「やりがんな」を作ってもらった相手は、白鷹幸伯さんですが、西岡棟梁が東京で薬師寺金堂の模型の展覧会を開いたときに、偶然、会場近くの金物屋(白鷹さんの店)を覗いたのが縁だというのが面白いですね(宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み/西岡常一/日本経済新聞社)。白鷹さんは、その後、昭和の薬師寺建立の際にも和釘を作っています。 現在の釘の耐用年数は、せいぜい30年といわれています。それは、錆が発生するかどうかで判断されるのです。錆びなければ、相当数の延命が期待できるでしょう。つまり、木材を含めた釘への防湿対策さえ取ることができれば、耐用年数は格段に延びるともいえます。どうしても錆が発生する可能性にある部位には、ステンレス釘を使えばよいのです。 ■釘の誤使用と業界の問題 ホームセンターなどでは、箱入りはJIS規格を確認できますが、ビニル袋入りは規格を確認できない状態で販売されています。JIS規格外なのだと思います。インターネット上でも、多数が規格を明示しないで販売されています。購入する側だけでなく、販売する側にも問題があるでしょう。確信犯は問題外として、釘の誤使用が問題となっている訳ですから、カラー化も含めて、後確認できるシステム作りが必要です。建設業界一般に対する不信感の代表的な問題の一つが「釘の問題」だともいえます。現場で働く人の勉強不足もあると思います。問題性が叫ばれているのですから、まず対策するべきでしょう。そのための第一歩は、デジN釘の普及などカラー化の対応をする、構造体へのビス使用の明文化、などから始めるべきと思います。 |
釘の胴部の形状と記号/JIS (※3) |
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安田工業のホームページより |
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011 構造用合板について(2011年3月15日) |
普通合板 JASマーク表示例 |
コンクリート型枠用合板 JASマーク表示例 |
構造用合板1級 JASマーク表示例 |
構造用合板2級 JASマーク表示例 |
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■合板とは 合板と一口に言っても、際限なく種類があります。一般に木質ボードといわれる木材小片を接着剤で熱圧成型した板材も建築に使われますが、合板とは異なるものです。合板はJAS(日本農林規格)、木質ボードはJIS(日本工業規格)で規定されています。ちなみに木質ボードを総称してパーティクルボードと言ったりしていますが、素材となる木質チップの大きさにより、以下の板材があります。(大きいチップ順) ・OSBボード(Oriented Strand Board) 構造用パネルといわれるものは、このOSBボードをさすことが多いのですが、構造用パ ネルは、JAS規格も定められています ・パーティクルボード(Particle Board)/チップボードともいわれる ・MDF((Medium Density Fiberboard) /中密度繊維板ともいわれる あるいは繊維板(ファイバーボード)は、密度の違いにより、以下の分け方があります。 (密度の高い順/JIS) ・ハードボード ・MDF ・インシュレーションボード そして、インシュレーションボードも用途により、 ・タタミボード(畳床用) ・A級インシュレーションボード(断熱用) ・シージングボード(外壁下地用) などに分けられています。その他、仕上げに変化を付けたり、メーカーが独自の名前を付けたりと正確な分類は難しいといえます。いずれにしても、今回はJASで規格された構造用合板についての考察です。東京合板工業組合/東北合板工業組合から出版されている「合板のはなし」「構造用合板の手引き」なども参考にさせて貰いました。 |
強度等級を記号A,B,C,D
で表す構造用合板の等級と 板面の品質(※1) |
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■合板の種類 ○樹種による分類 ・広葉樹 国産材:シナ・カバ・セン・ブナ・ナラ等 外 材:ラワン類・パプアニューギニア材・アフリカ材・ポプラ等 ・針葉樹 国産材:スギ・カラマツ・トドマツ・アカマツ・エゾマツ・ヒバ等 外 材:ベイマツ・ベイツガ・スプルス・サザンパイン・カラマツ・ラジアータパイン等 ○接着耐久性能別による分類 ・特類(フェノール樹脂接着剤等) 建築基準法/告示では、屋外に面する壁または常時湿潤の状態にある壁の場合、 使用する構造用合板は特類に限るとされています。 ・1類(メラミン樹脂接着剤等/タイプ1) 防水紙等で防水処理を施した外壁・屋根・間仕切壁・床の下地材やコンクリート型枠合 板(コンパネ)等に使われます ・2類(ユリア樹脂接着剤等/タイプ2) 家具用合板・船舶車両等の内装用合板等に使われます ○構成別による分類 ・ベニヤコアー合板 心板・添心板に単板(ベニヤ)を使用した一般的な合板 ・ランバーコア合板 心板にランバー(挽き板)、表・裏・添え心板に単板を使用した合板 ※挽き板(ストリップス)とは、幅の狭い板材を剥ぎ合わせたものです 一般に家具・ドアなどに使われます ・その他の合板 心板にパーティクルボードやMDFを使ったボードコア合板とか、軟質繊維板を使った特 殊コアー合板(軽量合板)などがあります。 |
構造用合板1級の強度等級(※2) |
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○プライ数とLVLについて 合板は通常、奇数枚の単板を 繊維方向が直行するように貼り 合わせています。その単板の枚 数をプライ数といい、7プライ といえば、7枚の単板を貼り合 わせた合板です。 また、単板の繊維方向を揃え て貼り合わせた合板を単板積層 材(LVL/Laminated Veneer Lumber)といいます。 |
0°方向(長辺方向)、90°方向(短辺方向) (構造用合板の手引き/東京合板工業組合・東北合板工業協会より)(※3) |
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○用途別による分類 ・普通合板 一般にベニヤ板と呼ばれる合板で、樹種名を付けてラワン合板・シナ合板と呼ばれます ・コンクリート型枠用合板(コンパネ) コンクリート打ち込み型枠用合板です。表面処理をした商品もあります ・構造用合板 Kプライとも呼ばれ、木質構造建築物の構造体力上必要な部位に使用されます ・特殊合板 天然銘木の薄い単板を表面に貼った天然木化粧合板やメラミン樹脂・ポリエステル樹 脂・金属箔・布・PVCシートなどで表面処理(オーバーレイ)した特殊加工化粧合板等が あります |
(同上資料より)(※4) |
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・その他 足場板用合板や防虫処理や難燃処理などをした多数の種類があります ■構造用合板の種類 ○板面の品質による種類 節の多さ、大きさによって、AからDまでの4段階に分けられ、それぞれ表面と裏面を A−B、B−Cなどの組み合わせで、9等級に分けられています。構造用合板は、下地材 となることが多いため、C−D等の等級が多く使われます。(※1) ○1級と2級 JAS規格上は、規定されている強度試験結果による種類ですが、実際上は強度等級を A,B,C,D,E,Fで表しているようです。(※3) ・ラワン合板は、A,B,C,Dの等級で表され、1級になる(※3) ・針葉樹合板は、E,Fで表され、1級と2級がある(※2)(※4) 2級であっても一般的な使い方では強度的には十分な余裕があるため、壁・床・屋根等の下 地板には、2級が利用されることが多いのです。 |
(同上資料より)(※5) |
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○標準寸法と実際の生産品 構造用合板の標準寸法と実際の標準生産品目は、表(※5)(※6)のようになっていま すが、規格外の製品がないとも限りません。JASマーク等で確認する必要があります。 ■構造用合板の拡散化学物質 ○ホルムアルデヒド拡散量について シックハウス対策規制により、表(※8)のようにF☆☆☆やF☆☆の製品は使用が制限さ れています。F☆製品は使用不可です。面積制限のないF☆☆☆☆を使用したいものです。 また、F☆☆やF☆は標準生産品ではありません。 ※7の数値(mg/L)は、デシケータ法という、20°Cのデシケーター内に一定量の試料を 24時間放置して、デシケータ内の蒸留水に吸収された濃度を示したものです。壁紙などでも 利用され、JAS/JISで規格が定められている手法です。 |
(同上資料より) (※6) |
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※8の数値は、構造用合板の面積のみを表していますが、実際には他の建築材料との総和 で使用面積の制限を判断しますので、あくまでも参考値です。実際の建築基準法による 使用制限は、※9の表が適用されます。 ○4VOCについて 同様に、ホルムアルデヒド以外のVOC(揮発性有機化合物)について、(財)建材試験 センターが、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレンの放散度基準値を示しています。 ・トルエン 38μg/uh(0.038mg/uh) ・キシレン 120μg/uh(0.12mg/uh) ・エチルベンゼン 550μg/uh(0.55mg/uh) ・スチレン 32μg/uh(0.032mg/uh) |
と基準値/JAS規格(※7) |
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国産の構造用合板については、 この基準値を大幅に下回っている データが各種出ています。 ○防虫・防腐・防蟻について 合板の製造は、高温熱処理(単 板乾燥工程:150〜175度、 接着硬化工程:100〜130 度)をするので、その際に虫がい ても死んでしまうと考えられて いるようですが、出荷までの間 に産卵等の可能性もあります。 単板はホウ素化合物で処理をし て、接着剤にはフェニトロチオ ンなどの化合物が混入されてい るようです。同様に、防腐・防 蟻処理のため、各種の化学処理 をしているようです。合板は住 宅等に使わない方が良いという 考え方をする方がいますが、否 定しきることはできないでしょ う。 |
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■壁倍率と壁強さ倍率 インターネット上の情報などでは、壁倍率と壁強さ倍率を混同した説明が流布していますが、異なるものです。 壁倍率とは、建築基準法により定められた壁の体力性能を表す数値です。基準性能値(平面上の壁の長さ1m当たり200kgの体力、即ち1.96kN)に対する倍数で表されます。建築基準法施工令46条では、木ずりを両面に打ち付けた壁を1.0倍として、90mmの筋交いをたすき掛けにした壁を5.0の上限値としています。その他、告示(昭56告1100)においても各種のボード類の壁倍率が示されています。少し古いのが気になりますね。(※10) 一方、壁強さ倍率とは、耐震改修促進法に基づく壁の耐震性能を表す数値であり、財団法人日本建築防災協会発行の「木造住宅の耐震診断と補強方法」に示されています。性能値は、平面上の壁の長さ1m当たりkN(キロニュートン)で表します。数値は、表のようになっています。(※11) これをみると判るように、木造軸組工法の構造用合板の壁強さ倍率は5.2倍(胴縁仕様の場合3.0倍)となっていますが、厚さの規定がありません。7.5mmでも良いことになります。 枠組み壁工法の場合は、7.5mmで5.4倍、9.0mm以上で6.2倍になっています。いずれも、1級・2級の区別はありません。 ■存在床倍率(床と屋根の場合) 存在床倍率とは、品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)で示された床組の水平構面としての耐力を表す単位です。表(※11)のように、製材小幅板を張った床よりも、構造用合板を張った床の方が存在床倍率が有利なことが判ります。 また、根太及び火打ちなしで24mmの構造用合板を床に張った場合でも、四周釘打ちの場合で3倍、川の字型(短辺方向のみに釘打ち)した場合で1.2倍の存在床倍率が得られるようです。厚さ28mmを根太及び火打ちなしで四周釘打ちした場合は、最大6.73倍の性能評価を受けています。ただし、釘打ちの大きさ・ピッチ・張り方(千鳥張りが望ましい)などに要件があります。床の納め高さ等の条件により、利用方法があると思います。 また屋根についても、床と同様に、構造用合板が有利なことが表(※13)から判ります。 ■構造用合板のまとめ 日本における合板の歴史は、名古屋の浅野吉次郎氏が開発したベニヤレース(丸太をカツラムキして単板を製造する機械)の実用化が始まる明治にまで遡るようです。しかし、大正中期にラワンと総称される熱帯産広葉樹木材が輸入されるようになってから、合板/ベニヤというとラワンを連想する時代が長く続きました。しかし1982年のフィリピンのラワン原木の全面輸出禁止、1985年のインドネシアの丸太輸出禁止に至って、原木輸入が減ったため1996年には国内産合板生産量が輸入合板に逆転されました。 そのころから、市場には針葉樹木材を原料とする国産合板が出回るようになりました。同時に品質も向上し、日本合板工業組合連合会の合板の統計をみると、1994年から2000年頃までは約25万〜14万uで3%程度に過ぎなかった合板素材の国産材率が、2009年には約198万uで64%まで伸びています。そして、1998年には |
建築基準法による壁倍率 (※10) |
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( )内は胴縁仕様の場合 複数を併用する場合は9.8kN/mを上限として加算できる |
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国内合板生産量の約86万uで26%だった針葉樹化率は、2003年には約187万uと50%を超え、2009年には約193万uの84%に達しています。生産量に比べて比率が上がっているのは、その間に需要量が半減しているからです。 一方、合板の供給量も、1973年の約1,013万uをピークとして、2009年には約512万uまで落ちています。半減した訳です。しかし輸入比率は17%から56%にまで上がっています。要するに、全体の供給量/需要量は落ちながら、国内産の合板の針葉樹化率は伸びているが、輸入する広葉樹合板比率の方は逆に増えていることになります。 ここで、構造用合板の国内需要量と輸入量を捜したのですが、見つけることはできませんでした。生産量は、農林水産省の合板統計を見ると判ります。合板全体の生産量に対する構造用合板の生産量は、1998年には約74万uの23%ですが、2009年には、約180万uの79%と確実に増えています。これは、阪神・淡路大震災等をきっかけとする耐震化工法の採用と、昨今の耐震補強の影響が多いと考えられます。 このように合板、特に構造用合板一つとっても、調べきれませんね。特に、インターネット情報では、おかしいなと思う内容も掲載されていることも良くあります。業界資料も、手前勝手な書き方に感じるところがあります。何気なく使われている材料でも、本当はどうなんだと思ってしまうと大変だなと感じた次第です。最近もサッシの耐火基準不足が報じられましたが、またまた業界不信の種を蒔いてしまったことを残念に思う今日この頃です。 この記事は、以前にできていたのですが、掲載をしようと思ったところ、「東北地方太平洋沖地震」が発生しました。マスコミでは、<東日本大震災><東北関東大震災>とも称されている甚大な被害が報告されています。映像でみる大津波の驚異には驚くばかりです。一昨年の日本一周の際にも訪れたところがたくさんあります。また、南相馬市の海岸付近には私が建設会社に在籍した折に、責任者で建設した建物群があります。被害を受けたと予想せざるを得ない位置にあったはずです。原子力発電所へも深刻な影響を与えています。自然のエネルギーを思い知らされた次第です。人知を超えたという言い方は簡単ですが、それでは済まされないことを肝に銘ずる必要がありますね。被災地の方々に対して、心からのお見舞い申し上げるとともに、これからの情報に注目していきたいと思います。 |
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